【マイルス・デイヴィス】Miles Davis in Europe  レビュー 考察36  

【PR】この記事には広告を含む場合があります

このアルバムのポイント(かなやま考)

■フランスでのライブ録音。メンバー紹介のフランス語なまりの英語は非日常へいざなってくれる

■2種類のジャケット・アート。新ジャケットはマイルスの笑顔がキュート♡

■トニー・ウィリアムスを中心とした疾走感ある演奏。マイルスもノリノリ。

こんな独創的なリズム隊を聴いたことがない・・・。

それが僕の第一印象だったこのアルバム。

そのリズムに乗っかってマイルスジョージハンコックも刺激されて楽しそうに演奏している・・・。

フランスでのライブ録音でCDでいうと1トラック目にはMCのエルビー・アンクック氏のメンバー紹介から始まります。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

フランス語のメンバー紹介が非日常へ連れていってくれますね。拍手と歓声がこのアルバム全般に盛り上げてくれます。

スポンサーリンク

Miles Davis in Europe 概要

1963年 Columbia

George Colemants
Herbie Hancockp
Ron Carterb
Tony Williamsds

2種類のジャケット Miles Davis in Europe

旧来のジャケットと新ジャケットの2種類がこのアルバムには存在します。

旧来のものがマイルスが真ん中で演奏しているもの。

新バージョンが珍しく帝王がかわいい笑顔で写っているもの。

帝王に対して「かわいい」とはなにごとだ!とおしかりは受けるだろうけれども、やっぱりかわいいじゃないですか。

自然体のマイルスなのかなと期待したいところw。

そして新バージョンのほうは冒頭のメンバー紹介のMCで1トラックとしていて枯葉が2曲目で全6曲構成です。

どうやら曲の長さも異なるようで新バージョンのほうがロングバージョンを含むようでより良いのではないでしょうか。①はメンバー紹介。5曲演奏で約70分と聴きごたえも十分です。

楽曲を聴く・・・Miles Davis in Europe

Autumn Leaves を聴く

あのシャンソンの曲を1958年にSomethin’ Elseで大変革をおこしたマイルスのオリジナルと言ってもいいようなこの名曲。そう、Blue Noteから出すためにキャノンボール・アダレイ名義でリリースしたあの名曲のライブ演奏ですが、疾走感と迫力のある名演に変化しています。

Milestones を聴く

1958年の同タイトルのアルバムより。

マイルスは「マイルス・デイヴィス自伝」の中でドラムスのトニー・ウイリアムスとのやりとりを語っています。

トニー少年マイルスに言いました・・・。「惚れこんだ最初の音楽が、あなたの音楽だった」

Milestonesは時代を超えた決定的な作品で、ジャズを演奏する誰もが聴くべきレコードだと思う」

あのマイルスがその言葉に「本当か!?」としか答えられなかった・・・と語っています。

それでマイルスはこの過去の曲を演奏することにしたとしています。

19歳ほど年下のトニーにマイルスが影響されてこの曲を演奏することになったそうです。

トニーのドラムスにぼやっとしてると置いていかれるとあのマイルスですら言っています。今何小節目を演奏しているかわからなくなる状態をいわゆる『ロスト』と言いますが、そんなおいてけぼりを僕はいつも喰らっています。

でもこのクインテットの一体感といったら・・・。神!!

あのイントロが聴こえてくるだけでニヤッとしてしまいます。

Joshuaを聴く

このライブの行われた年にリリースされたSeven Steps to Heaven(1963年)より。

この疾走感。

トニーロン・カーターのリズム隊にマイルスもいつもより「長く回していま~す」ってところでしょうかw。

ジョージのソロで変拍子しアイデア満載の演奏。

このクインテットに誰も近づけない・・・。

All of You を聴く

1956年 ‘Round about Midnight より。

ちょっとヒート・アップぎみ、加熱しすぎたライブにふっと小休止を・・・というような始まり方をするが、それでもどんどん加熱していくバラード・・・。

これも仕掛けてくるリズム隊の二人がすごい。

少ない最小限の音で各人、おもい思いのソロをとる。

伴奏者もそのひとつひとつの音に細心の注意を払いながら対話を楽しんでるという印象。

一人ひとりのソロが終わるたびにきっとあなたも会場と一緒に拍手を思わずしたくなることうけあい・・・w

幸せな溜息が出ますw。

しかしこんなに楽しいドラムス、他にあったかな・・・。かっこいい!!

Walkin’  を聴く

ここで往年の曲をラストに。

1954年 Walkin’ より。

ああ・・・僕はもうロストしまくり・・・。全然ついていけない・・・でもこの洪水に身をまかせているほうがなんだか心地よい。不思議な感覚です。w

トニーくんの最高のステージをマイルスは用意してあげたのでしょう。

マイルスのミュートにノックアウトされたあとは、トニーのドラム・ソロに舌鼓。きっとマイルスは安心して舞台袖に引いていったんだろう・・・。安心してソロを任せたに違いない。

あれ、いつのまにかジョージのテナーが吹きまくっている。でもこれはコルトレーンの吹きまくり感と異なってる・・・。そう、リズム隊の二人とのバランスが非常にいい・・・。バンドとして疾走感が調和されていると感じます。

ロンのベースがブイブイいわせる上を飛び交うジョージのテナーのソロの最後は不思議な音の出し方をしてフィニッシュ。

続いてのハンコックのピアノ・ソロも音数がめちゃくちゃ多い

にもかかわらずまったく嫌味もストレスもなく、一音一音の粒立ちがはっきりしているのに、滑らかに音が流れていく。さすがです。当然か。

テーマに戻って最後もトニーのテクニックを聴きながら万雷の拍手とともにフェード・アウト

Miles Davis in Europe 全般をとおして・・・こんなもんじゃないこれからのライブ録音

もう十分僕なんかはロストしまくり、置いていかれて、むちゃくちゃになっているのですが、なんだかそれが気持ちがいい。素晴らしいライブです。

もう書いていますが、トニーのドラムスが本当に肝なのではないでしょうか?

どんなアクションが起こるかわからないスリリングなドラムスロン・カーターはしっかりとタッグを組んでいる。

そこに安心して乗っかるマイルス

ジョージのサックスもハンコックのピアノも音数が増えるのはリズム隊の二人に影響されてのこと。でもそれが恐ろしいくらい調和がとれて、バンドとしての一体感を生んでいる。

これまで時系列にゆっくり一枚ずつ丁寧にマイルスのアルバムを聴きなおして記事にしてきたせいか、例えばコルトレーンが吹きまくっているものと、このアルバムで音数多く吹きまくっているジョージ・コールマンでは、リズム・セクションとの調和が異なることで、当アルバムはより良い演奏として聴けるのではないか?と僕は勝手に思っています。

そしてお客さんの歓声や拍手、指笛・・・。

こんなライブを生で観て聴いてみたいものだと思います。

そしてこの先またこれを上回るライブ・アルバムが・・・。

また次回、ご一緒に楽しみましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. 油井洋三 より:

    今はマイルス・デイヴィスの事をマイルスと言うのか。昔はデイヴィスと言っていたものだ。

    • kanayama@jazz kanayama@jazz より:

      油井さん
      コメントありがとうございます!「昔は…」とのことですがどれくらい前のことなんでしょうか?プロフに書いているのですが私はまだマイルス・デイヴィスを聴き始めて何年かのぺーぺーです。ぜひ教えを請いたいです!!そして「油井」さんってあの有名な油井さんと関連のある油井さんでしょうか???だとしたら…非常に興味があります!!よろしければコメントをください!!よろしくお願いいたします。