【中山康樹】【マイルス・デイヴィス】『マイルスを聴け!』について考える

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僕はマイルス・デイヴィスが残した公式盤主要アルバムをだいたい時系列に81タイトルをブログ記事にするという変態染みたことをやってみましたw(自己満足w)。

その際にかかせなかったのが、マイルス・ガイドのバイブルと言っても過言ではない、中山康樹さん著の『マイルスを聴け!』シリーズです。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

はじめましてのかた・・・。マイルス・デイヴィスにドハマりしている、かなやまと申します。自己紹介ページはこちらです。

この記事では、『マイルスを聴け!』の魅力や、マイルス・デイヴィスの聴き方、楽しみ方を解説してまいります。

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『マイルスを聴け!』とは・・・

そもそも『マイルスを聴け!』という、命令形のタイトルが付けれらたこの本は、どのような本なのでしょうか?ジャズやマイルスを知らない人には、イラっとさせてしまうタイトルかも知れません。

僕なりに解説させていただきます。

中山康樹さんのご略歴

中山康樹さんは1952年生まれの日本を代表するジャズ評論家です。詳しくはwikiを見ていただくほうが手っ取り早いかと思いますが、ジャズ雑誌『スイング・ジャーナル』編集長をされていた経歴をお持ちだったり、マイルスだけでなく、さまざまなジャズのライナー・ノーツを書かれたりとご活躍されました。

文体が親しみやすく、広くジャズ・ファンに愛された方です。

マイルスと個人的交流もされていたこともあり、他にはない独自の帝王とのエピソードや情報をお持ちです。

ジャズ・ファンにはたいへんありがたい存在です。2015年1月28日に62歳でご逝去されています。

『マイルス・デイヴィス自伝』(シンコー・ミュージック)では、翻訳もされた中山さん。英語も堪能だったのです。

ヴァージョン・アップを重ねた、究極のマイルス解説書

1992年5月(マイルスの逝去から約半年後)、中山康樹さんは径書房より『マイルスを聴け!!』というタイトルで『マイルスを聴け!』シリーズの初版を出版されました。

マイルスがこの世を去っているにもかかわらず、年々、リリースされ続ける公式盤と海賊盤(ブートレグ)に、中山さんはしっかりとチェックをいれておられます。

マイルスのアルバム解説を重ねていき『マイルスを聴け!version〇』として版を重ねていきます。

初作は341Pだったようですが、次々リリースになるCDと共に、次第にページは増えて、最終ヴァージョンとなった『8』双葉社2008年9月)は1153Pにも及びました。

『マイルスを聴け!』のコンセプトとは・・・

中山さんは『マイルスを聴け!』を・・・

①初めて読む人むけ

マイルス者中山さんが名付けた、マイルスばかり聴く熱狂的ファンのこと)むけ

の2種のコンセプトがあると言及していますのでご紹介します。

①はじめて『マイルスを聴け!』を読む人むけに・・・

『人生、マイルスだけでやっていける』・・・いきなり中山康樹さんお得意の極論です。『マイルスさえ聴いていれば、その他のジャズはほとんど必要ない』と続けます。

マイルスやジャズをちょっと聴いてみようかなと思った人には、ますます『マイルスだけを聴けばいい』と断言します。

それはマイルスのアルバムを聴けば『主要なミュージシャン』はイモヅル式ついてくるということです。

ここに登場しないミュージシャンは『主要ではない』とさえ・・・w。

『マイルスを聴け!』と、まさに命令形でジャズやマイルス初心者へ強く主張します。

②『マイルス者』(上級者)むけに・・・

次々リリースされる公式盤、海賊盤問わず膨大なアルバムについて、中山さんはそれまでのデータから、ヴァージョン・アップの度に加筆したり訂正したり・・・。

前ヴァージョンを引き継ぐだけの、単純なヴァージョン・アップをしていないのが、『マイルス者』にはたまりません。

『新たな音源が加わることによって変更が生じた場合や新たなデータが入手できたものに関しては、時にはかなり大幅な加筆訂正を行っています』とのことです。

『マイルスを聴け!Version8』『<Version8>のためのイントロダクション』というタイトルの『前書き』にあたるページを一部、引用します。

『聴け』とは、すべてのアルバムを等価としえ捉え、すべての音を全身で受けとめ、受け入れることが『音楽を聴くこと』であるという考えに基づいている。つまりは世評や定説を無視し、惑わされず、さらにはつまみ食いならぬ、”つまみ聴き”を良しとせず、すべての作品に接し、清濁合わせ飲んでこそ立ち現れる世界観、それを『音楽を聴くということ=マイルスを聴くこと』と捉えている。

マイルスを聴け!Version8 『ヴァージョン8』のためのイントロダクション(4ページ)より

中山さん、なかなかストイックです。

ダテにブートレグを含めて562タイトルものアルバム・レビューを書いてはいないです。

つまみ食いならぬ、『つまみ聴き』するなと・・・『すべての作品に接し、清濁合わせ飲んでこそ』マイルス・・・とも。

どんなにマイルスの作品群を愛する人でも『清濁』があると感じるんです。

意味が理解できない『暗黒』の作品にぶちあたり、何度、聴いても聴いても、悩みが深くなるマイルス作品があるもんなんですね。

それをすべて『飲んでこそ』が初心者にはわからない、『マイルスを聴く!』という上級者むけの聴き方になるんですね。

わからない・・・だからこそまんべんなくマイルス『聴け!』なわけです。

『聴け!』というタイトルの物議

命令形であるタイトルの『聴け!』は、尖った印象を与えて物議をかもしました。

英語にすると“Listen to Miles!”となります。すると非常にすんなりくる印象であると中山さんは『マイルスを聴け!Version7』前書きで書いておられます。

『マイルスを聴け!』のVersion7とVersion8を比較してみる

高額で売買される『マイルスを聴け!Version8』

どのヴァージョンを買ってみようかな・・・と思う方がいましたら・・・。

なんとこの記事を書いている2022年5月の時点では『8』は大手ショッピング・サイトで15000円で、フリマ・サイトでは16000円で販売されています!orz

ちなみに最初の径書房から出版の『マイルスを聴け!!』も、その希少性から高額で取引されているとのことです。

当時でしか読めない文章もあるので古いものもレア度が増していく現象が起きています。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

『マイルスを聴け!』シリーズは電子書籍化されていません(2022年5月現在)。

『マイルスを聴け!』 Version7とVersion8のスペック比較

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

電子書籍ではなく、実際に手に持つアナログ感が魅力の『マイルスを聴け!』

Version7と8のスペックを比較してみましょうwww。

Version7Version8差異
初版出版年2006年9月2008年9月2年
総収録枚数*473枚562枚89枚up
ページ数975P1153P178P・up
厚み(おおよそ)3.5cm4.0cm0.5㎝・up
重量(おおよそ)491g588g97g・up
*ボックス・セットや複数枚組アルバムは1枚カウント
筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

ヴァージョン『7』→『8』の2年でも、収録枚数の増加量が半端ないですね。

Version7とVersion8を並べてみる

僕が愛読しているのは『Version7』のほう。Amazonで購入し大切に使い倒しています。

我が街の図書館には、高額取引されている『Version8』が書庫で保管されていて、市民なら誰でも無料で借りられるのは素晴らしいことですね。

最終版の
『マイルスを聴け!Version8』
これは僕の私物
『マイルスを聴け!Version7』
帯を付けるとこんなん
普段はお手製の
その辺のものを使って作ったカバーで
目力の強いマイルスを隠しつつ
手垢から守ってますw
『Version7』はカバーを取ると
クールなマイルスが・・・
その写真は、公式盤としては
マイルスの生涯最後のライヴ演奏が
収録されている
『ライヴ・アラウンド・ザ・ワールド』(1991年)のフォト・セッションと
同じ時のものが使われているようです。
その辺の小説の紐しおり2本を
切って移植してみた。
1本では足りない。
2本は必要だw。
2冊を並べてみた
178ページ、厚さ5mmの差が
お分かりいただけるでしょうか?
図書館で借りている
『Version8』は
たくさんのマイルス・ファンの手垢が。

コスパのよい『Version7』

そこで僕のように『まずは公式盤だけでも全て聴いてみようか』と思うかたには、コスパを考えると『Version7をおススメします。

僕も持っているのは『』ですが、公式盤をひとそろえ解説してあるので十分と思います。

ただし、海賊版も聴きたい!という、いわゆる『マイルス者』には、さらにページ増殖している『8』は必須になるでしょう。

文庫の古本に万単位の出費は勇気がいりますよね・・・。運がよければ『7』は1000円以下で良品が買えるかもしれません。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

私物の『マイルスを聴け!Version7』について、

ブログを始めた当初に記事にしてましたのでリンクを貼ります。

てゆうか増刷してくださいませんかね・・・双葉社さん

TwitterのDMで双葉社さんに没後35年、生誕95年の2021年に僕は増刷をお願いしました。しかしご返信はありませんでした。そりゃそうでしょう・・・

電子書籍が当たり前の現代、素人のブロガーたったひとりの意見をいちいち聞いてなんていられないのでしょう。

せめて電子書籍化してはいかがでしょうか?とも思うのですが、僕は『マイルスを聴け!』に関してはデジタルではなくアナログな実の書籍で持ってこそと思うのです。

外へ持ち出すのではなく、スピーカーの前に陣取って、対峙しながらマイルスを聴きたいと思います。

手に重みを感じながらマイルスに耳を傾けたい・・・と思います。

現在の【マイルス考古学】にはかかせない最高峰・・・『マイルス・デイヴィス大事典』

『マイルスを聴け!Version8』から約13年ほどの年月が過ぎ、いったいどれほどのCD(ブートレグ含む)が発売されたのか・・・誰か調べたことがあるのでしょうか???

中山康樹さんがご存命であれば、もちろん『マイルスを聴け!Version9』として、さらに分厚くなって・・・もしくは厚すぎるために上下巻に分けて・・・きっと発売されたことでしょう・・・。

しかし現在、マイルスを聴くためにバイブルのような次のような書籍が出版されています。

小川隆夫さん著『マイルス・デイヴィス大事典』なる837ページにもおよぶ、超大作が2021年12月にシンコー・ミュージックより発売されています。

  1. ディスク・ガイド
  2. 演奏楽曲事典
  3. 関連人物事典
  4. 資料・索引

時代順だったり、アルファベット順だったり、五十音順だったりと、検索しやすいデータの羅列を、上記の4章構成で書いている、まさに『大事典』です!!

この1冊があれば、マイルスを聴くためには困ることはまずないでしょう。

そして小川隆夫さんの解説があるので各アルバム、各曲の理解度が増すのは間違いありません!!

『マイルスを聴け!Version9』が叶わない今日、この『マイルス・デイヴィス大事典』はまったく別物ではありますが、僕たちマイルス・ファン、ジャズ・ファンには必須の書籍となっています。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

2021年12月の発売から、おそらく日本一この大事典を使い倒したでろう

僕の【マイルス・ディヴィス大事典】レビューはこちらです。

『勝手にマイルス考古学』は『中山康樹考古学』でもあった・・・

僕は『勝手にマイルス考古学』と名付けて、まさに勝手にマイルス・デイヴィスのアルバム80以上をほぼ時系列に、勝手にレビューするブログをやってみました。

まさに、暇人、変人、変態www・・・いったいなんのために・・・?読んでくださるかたも少ないのに・・・。でも楽しかった・・・。

記事数でいくと100記事以上になった当ブログですが、こんなに書けたのも中山康樹さんが残してくれた『マイルスを聴け!』があったからこそです。

このシリーズがなければ、曲がりなりにも書ききることはできなかったはずです。

とくに聴きこみが浅かったいわゆる、エレクトリック期のマイルス・・・これを聴けば聴くほど、暗黒に落ちていくでした。

が、中山康樹さんの解説を読むことでなんとかヒントとポイントを押さえ、まさに『清濁を合わせて、すべて飲んで』を可能な限り実行しました。

わかりきれていないことも多々ありました。

でも、こうしてマイルスとの交流や、独自の視点を中山さんから教わると、なんだか光が見えてくるのです。

そしてマイルスのことを考えていたはずが、マイルスのアルバムから中山康樹を考えるという、逆転現象がときには起きていることが多々、ありました。

それが『勝手にマイルス考古学』という意味のない、だれも得しない、変態ブログをやってみて楽しかったことなのでした。

『<マイルスを聴け!>を読め!』がいくつかの僕の当ブログでの収穫の一つです。

これから『聴け!』以外の中山作品も、また1冊ずつ、読んでいこう。こうして僕の人生は、きっと潤いあるものになる・・・そう信じて生きていきたいと思うんです。

最終ヴァージョンとなった『ヴァージョン8』のあとがきでは、中山さんは『ヴァージョン9がでるその日まで、マイルスを聴け!』・・・と次作にも意欲的に巻末を締めくくられております。

2008年8月に『クールの誕生』(1949年)を聴きながら、このあとがきを書いたと記されています。

まだまだヴァージョンを重ねていただきたかったですね・・・。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

僕が中山さんの著書が大好きなところは、ユーモア溢れる文体に表れる、温かな人柄です。

楽しいジャズ談義とマイルス談義を

たくさんの人と繰り広げた素晴らしい人生だったことと想像します。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

そして結論。

『聴け!』を『読め!』

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