Miles Davis in Concert 概要
1972年9月 Columbia
Carlos Garnette | ss |
Cedric Lawson | key,synth |
Reggie Lucas | elg |
Khalil Balakrishana | el-sitar |
Michael Henderson | elb |
Al Foster | ds |
Mtume | per |
Badal Roy | tabla |
前スタジオ録音アルバム「オン・ザ・コーナー」から約3ヵ月。実際にあのサウンドをライブでやってみた・・・というコンセプトの2枚組アルバムであると、中山康樹さんも小川隆夫さんもそれぞれの書籍で述べておられます。
僕、個人的には1970年の精力的にライブをこなしていたライブ・アルバム「ライブ・アット・ザ・フィルモア・イースト」「ブラック・ビューティ」「マイルス・デイヴィス・アット・フィルモア」「ライブ・イヴル」あたりよりも、本作のほうがけっこう聴いていましたし、耳に馴染みやすい作品です。
もともとロックを聴いていたのもあるかもしれません。で、時系列には聴いていなかったので、前述のライブ・アルバムと本作の時代順がどう並んでいるのか?メンバーは?使用楽器は?・・・というところを全く気にもせずに聴いていました。
ただとにかく僕にとってはいわゆる、「電化マイルスのライブ」の中では聴きやすい!と思うので、その辺を書いていこうと思います。どうぞおつきあいくださいませ。
会場・・・PHillharmonic Hall Miles Davis in Concert
ニューヨーク、フィルハーモニック・ホールでのライブです。
この場所と同じ会場で録音としては、1964年2月の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「フォー・アンド・モア」の名作2枚があります。マイルスは「マイルス・デイヴィス自伝」の中で、小さなクラブでの演奏では人数も少なく限界を感じていたことに言及しています。
広い会場でやるにはアコースティックでは限界があり、隅の席の人など全員にいは音がいき渡らないことも感じていて、エレクトリックへの移行が始まりましたが、このような大きなホールで大音量で大人数の前でライブをやるのは、この時期以降のマイルスの考える理想的環境となっていきました。
メンバー編成 Miles Davis in Concert
Carlos Garnette/ss Cedric Lawson/key,synth Reggie Lucas/elg
Khalil alakrishana/el-sitar
Michael Henderson/elb Al Foster/ds Mtume/per Badal Roy/tabla
再度記載した9人編成の本作のパーソネルですが、1971年頃のツアーに帯同したメンバーとしては黒字で記載したマイケル・ヘンダーソンとエムトゥーメだけです。他の赤字のメンバーはこのライブからの参加となります。
「オン・ザ・コーナー」での混沌としたメンバーから厳選されたミュージシャンばかり・・・と言いたいところですが、中山康樹さんやその他、評論家の中でも評価が高いデイヴ・リーブマン(ss)が参加していません。これはもともとの所属のエルヴィン・ジョーンズ・バンドに在籍していて参加できなかったとのことです(中山康樹さん著「マイルス・デイヴィス完全入門」154ページより)。
中山康樹さんは「マイルスを聴け!Version7」の中で代わりに入った「カルロス・ガーネットにいたっては夢遊病者で、なにを吹いているのか、自分でもわかっていない」と超酷評www。
この後で取り上げる予定の「ダーク・メイガス」(1974年3月)まで、デイヴ・リーブマンにスポットを当てて楽しむのはとって置くしかないのですが、「ダーク・メイガス」より、他のこの時期のブートレグの中で「マイルスvsデイヴ・リーブマン」が高レベルで存分に楽しめると、中山さんはガイドしておられます。
(多分、in Tokyo 1973なるブートレグを、以前僕の大切なTwitterフォロワーさまから教えていただいたのがそれですかね)むむ、また老後の楽しみシリーズに追加・・・w。
楽曲を聴く Miles Davis in Concert
Rated Xを聴く・・・
「ゲット・アップ・ウィズ・イット」(1972年)より。録音日時とリリース時期の差異から、まだ本ブログでは取り上げていないアルバムからの楽曲で、このライブ時点では観客は聴いたことない新曲でのスタートとなりました。
今までは「ディレクションズ」がライブのオープニングが定着していましたので、このへんもニュー・スタイルです。スタジオ録音ではマイルスはオルガンを弾いていましたが、本ライブではもちろんトランペット。
激しいポリリズムながら、音の洪水を楽しめます。本格的にブロウするマイルスのミュート・ワウ・プレイは3分半を過ぎてから・・・1曲目を華やかに飾ります。図太いベース音を根幹に次第にヒート・アップしていくのがたまりません。
Honky Tonkを聴く・・・
前曲の流れから、気だるくギターのワウ・プレイでバッキング・メロディが始まる・・・。前曲同様、「ゲット・アップ・ウィズ・イット」(1970~1974年)からなので、このライブ時点では新曲です。
Theme from Jack Johnsonを聴く・・・
テンポがあがり、熱も急激に上がる。その上がったとろこに、シャッフルのリズムに変化するところで、単純な僕はもう、たまりませんw。一気にタテノリ!!この1曲があるがために、このアルバムは敬遠しがちな電化マイルスのライブ・アルバムですが、かなり聴いてるほうに入ります。
ず~っと体がリズムにのって首をとにかくタテに振る感じに、あなたもなりませんか?「ア・トリビュート・トゥー・ジャック・ジョンソン」でのノリとはまた異なる、この日の最骨頂と言えるでしょう。
Black Satinを聴く・・・
「オン・ザ・コーナー」から、印象的なベースとギターのメロディ・ラインが始まると観客からも大音量の隙間から拍手が聴こえます。原曲のあのポリリズム手拍子は入らないものの、メンバーのそれぞれのリズムの乗せ方が本当にこの曲を面白くします。後半のエムトゥーメのパーカス、バダル・ロイのタブラに魅了されてエンディングを迎える、DISC1の終焉は、全員参加のテーマに戻って・・・。
あれ?タイトルには「テーマ」と書いてありますが、これで十分のエンディングです。
Ifeを聴く・・・
僕の電化マイルスの浅はかさが露呈した「ビッグ・ファン」(1969年~1972年)より。「ビッグ・ファン」を繰り返し、聴きなおして、聴きなおして、がんばってレビューを書いて、このライブの「イーフェ」を聴くのが楽しみになりました。
このあとの1975年から長期休養に入るマイルスですが、明けてからもこの曲はけっこう演奏されている注目曲です(教えてくださった僕のTwitterフォロワーさま、ありがとうございます)。
途中からテンポが上がると、自分の熱気も上昇するのか?このライブでいうちょうど14分あたりからが、ハイ、またタテノリ!単純にこういうファンキーな感じが大好きです。そしてトランス・ミュージックのように気だるく迎える終板・・・。誰の声でしょう・・・25分過ぎ。
そりゃ「ザッツ・ライト!!」と叫びたくもなりますw。気持ちいいですね!!「フーッ!!」。最後のマイルスのワウ・プレイに酔いしれましょう。
Right Off を聴く・・・
「ア・トリビュート・トゥー・ジャック・ジョンソン」(1970年)より。スタジオ録音の原曲のディストーションの効いたメリケン・サウンドwとは異なるメリケンなサウンドです。
テンポもアップ!小川隆夫さんの「マイルス・デイヴィス大事典」の解説で記述されてますが、そうか、エレクトリック・ベースのマイケル・ヘンダーソンはオリジナルのスタジオ録音にも参加していたのですね・・・。
これだけ「マイルス・ミュージック・スクール」に生徒が多いと、なかなか頭に入ってないものです・・・。やっぱり「大事典」・・・いい本ですなあ。
あ、この曲も「テーマ」とクレジットされているけれど、実際は演奏されていない・・・。編集でカットされた感じもないようですし・・・。ヒート・アップして忘れてしまったのでしょうか?
自動車事故と薬物依存 Miles Davis in Concert
1972年の秋に「オン・ザ・コーナー」がリリースされました。これを受けてのライブ・ツアーが計画されていたとのことが「マイルス・デイヴィス大事典」(小川隆夫さん著)に書かれています。
しかしその直前の1972年10月9日にマイルスは愛車のランボルギーニ・ミウラで両足を骨折する大事故を起こしました。「マイルス・デイヴィス自伝」によるとライブの疲労から睡眠剤を飲んだマイルス。
なのに眠れず、愛車ででかけて居眠り運転をしてしまいました。3ヵ月ほど、活動ができなくなったマイルスを支えたのがマイルスの姉のドロシー・メイ・ウィルバーンと当時の恋人のジャッキー・バトルでした。
この二人が、薬物に依存していたマイルスの更生に尽力していました。しかし、『マイルスは潰瘍の出血、腰の不調、喉仏の結節、ブラジルでのツアー中の心臓発作に悩まされた。
ステージ上で血を吐き、脚は痛みでワウワウやボリュームペダルを手で操作しなければならず、ステージ外ではスコッチとミルク、ブラッディ・マリー、パーコダン、そしてさらにコカインで自己治療をしていた』(引用原文はこちら)との記録があるほど、かなりコンディションは最悪・・・。
1975年からの半引退状態、長期休養に入る一つの大きな要因となってしまいました。
そんな大事故とコンディションが本作「イン・コンサート」の録音された9月29日の直後に起こっていました。「あの交通事故の後、すべてが曖昧になり始めた」とマイルスは後に語っています。後にマイルスの人生には暗い影を落とす出来事でした。
全般をとおして・・・Miles Davis in Concert
「オン・ザ・コーナー」をコンサート・ホールに人をたくさん集めて演奏してみたい、しかも今すぐにやってみたい!というマイルスの探求心で、スタジオ録音からたった約3ヵ月で行われたライブ。それをきっちり録音して、リリースする・・・。
たくさんの会場の隅々の人々に聴かせるだけではなく、ライブにも残してくれたのは、ファンとしてはありがたいです。
中山康樹さんは「マイルスを聴け!Version7」で本作のマイルス9人編成バンドを「断じてベストではない」とおっしゃっている。
この録音のフィルハーモニック・ホールの2週間前に行われた、ボストンの「ポールズ・モール」で行われブートレグで出ている“Complete Live at Paul’s Mall 1972”なるCDを大絶賛されています。そちらをぜひ、お聴きになってみてはいかがでしょうか?
「エレキ・シタールおよびタブラ等インド方面導入バンドのベストがこれだっ!」とのことですw。僕はまだ、本作を聴きこんで、聴きこんで、それから考えます・・・。
まだまだ、修行が足りませんので・・・。絶対とは言いませんが、まだ買いません・・・。多分、買いません・・・。きっと・・・うん、ちょっとAmazon検索だけしてみよっかな・・・w。
⇧中山さんが推薦してるのはso whatレーベルですが、こちらはHi Hatレーベルです(しっかり検索しているワタクシwww)。
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