【マイルス・デイヴィス】Miles Davis At Fillmore アルバムレビュー 考察56

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Miles Davis At Fillmore 概要

1970年 6/17~6/20 Columbia

Steve Grossman/ss,ts  Chick Corea/elp  Keith Jarrett/org Dave Holland(b, elb) Jack DeJohnette/ds  Airto Moreira(per)

「もしCDをトレーにのせる前に、このライナーを読んだなら、ぜひともDISC2の<Friday Miles>から聴いてくれ」・・・こんな文で始まる1996年に書かれた藍良章さんのライナー・ノーツ。

1970年6月の4日間のライブの録音された2枚組アルバム。「ブラック・ビューティ」から約2ヵ月。キース・ジャレットがオルガンでの参加で鍵盤x2の入った7人編成です。このメンバーでの唯一のアルバムが本作となります。

帝王はこのロックの殿堂「フィルモア・イースト」ではジャズ出身ということでまだまだポジションは低かったそうです。ローラ・ニーロという人の、なんと前座だったそうです。

はい、ワタクシ、名前すら存じあげませんw。

この会場においてのマイルスの初出演は遡ること約3か月前で、「ライブ・アット・フィルモア・イースト」と題されたアルバムを残しています。

そもそも「ロックの殿堂」などと呼ばれる場所でのライブ・・・。マイルスは初出演前まではこんな会場では演奏したくなかったのです。

しかし、ジャズの人気が落ち、ロックが幅をきかせていく時代、こういった会場への出演もクライブ・ディヴィス(当時のコロムビア・レコードの社長)に提案され、嫌ではあったが検討しました。

マイルスは黒人差別を受けていました。

コロムビアが白人ミュージシャンと同等にマイルスをフィルモアに出演させて、ロックのように若い聴衆にも売り込もうとしていることから、他の黒人ミュージシャンに追従してほしいと考え、フィルモア出演を決めました。

通常もらえるであろうギャランティーの半値以下でも、白人ミュージシャンたちの前座として出演したのがこの頃の東西フィルモアでのライブです。

当初のレコード(2枚組)では4日間のライブを収録していて1枚目A面Wednesday Miles、B面Thursday Milesとして、2枚目A面Friday Miles、B面Saturday Milesとして、区切ることなる収録されています。

CDではDISC1をWednesday Miles、Thursday Milesとして、

DISC2をFriday Miles、Saturday Milesとして収録していますが、きちんと楽曲ごとに区切られて、聴きやすくなっています。ありがたい。

テオ・マセロの編集がバリバリに入っていて、要点をしっかり集約、つなぎあわせて、濃い内容になっております。

各日のコンプリートもののブートレグがありますので、マニアのかたはそちらとあわせて聴かれるといいと思います。

僕はこの編集されたものの凝縮感がいいのかなと思ってます。

音もいいですし、なんら問題もなく、すべてを聴きたいという気持ちもわからなくもないですが、このライブ・アルバムは神がかっていて、すごくまとまっていると思います。

とにかくドバ~感がすごい!

ジャケットを眺める・・・

黒と赤を基調とし、ライブの写真をコラージュしたジャケット・デザインです。テオ・マセロの音楽コラージュを連想させるようなデザインですね。すごくかっこいいです。

キース・ジャレットの参加について・・・

ここから1年半ほどマイルス・バンドに入門するキース・ジャレットです。

オルガンで本作には参加しています。チックとの鍵盤バトルが本作の魅力の一つとなっています。マイルスとは19歳ほどの年齢差があります。

キース・ジャレット - Wikipedia

チャールス・ロイトのバンドに在籍したキースをマイルスが勧誘するかたちで移籍。

「マイルス・デイヴィス自伝」によると、キースは「バンドに入る前はエレクトリックを嫌っていたが、オレのバンドにいるうちに奴の考えも変わった」(383ページ)とマイルスは言っています。

キースとチックの二人が在籍したことをマイルスは「あの二人が一緒に演奏していたなんて、なんとも言いようがないほど素晴らしかった」と振り返っています。

楽曲について・・・

この辺のアルバムを聴いていると「この曲はどのアルバムに入っていたっけ?」とか、「誰の作曲だっけ?」と、迷子になると思う(僕がそう・・・)ので表にしてみました。参考にしてください。

Disc1 Wednesday Miles~Thursday Miles

No.Disc1 Wednesday MilesFrom Album…written by…
1DirectionsDirectionsZawinul
2Bitches BrewBitches Brew(1969)Miles
3The Mask新曲Miles
4It’s About That TimeIn A Silent Way(1969)Miles
5Biches Brew / The ThemeBitches Brew(1969)/-Miles
Disc1 Thursday MilesFrom Album…written by…
6DirectionsDirectionsZawinul
7The Mask新曲Miles
8It’s About That TimeIn A Silent Way(1969)Miles
③⑦The Maskはこの時点では新曲で1970年のBitches Brew[40th Anniversary Edition]にも収録される。①⑥Directionsは同名タイトルの未発表演奏集に収録されている。

Disc2 Friday Miles~Saturday Miles

No.Disc2 Friday MilesFrom Album…written by…
1It’s About That TimeIn A Silent Way(1969)Miles
2I Fall In Love Too EasilySeven Steps To Heaven(1963)Sammy Cahn,Jule Styne
3SanctuaryBitches Brew(1969)Miles
4Biches Brew / The ThemeBitches Brew(1969)/-Miles
No.Disc2 Friday MilesFrom Album…written by…
5It’s About That TimeIn A Silent Way(1969)Miles
6I Fall In Love Too EasilySeven Steps To Heaven(1963)Sammy Cahn,Jule Styne
7SanctuaryBitches Brew(1969)Miles
8Bitches BrewBitches Brew(1969)Miles
9Willie Nelson/The ThemeYestrernow <A Tribute To Jack Johnson>(1970),DirectionsMiles
⑨Willie NelsonはA Tribute To Jack Johnsonの2曲目Yesternowの14分あたりから。未発表演奏曲集のDirectionsには独立した1曲として収録されている。

Black Beauty と Live At Fillmoreの決定的違いについて・・・パーカッションと編集

前回、ブログに書きました「ブラック・ビューティ」の中で、おもしろい音を出す機器としてリング・モジュレーターをご紹介しました。

これのおかげでスペクタクルな音をチックが奏でていましたね。

今回はアイアート・モレイラのパーカッションの一つにスポットをあててみます。「クイーカ」というそうです。

プロのパーカショニストが解説してますが、おもしろい音ですね。これだけ単体で聴いていたら、かなりマヌケな?愉快な音で笑えます。

それが本作だけではないですが、随所に出てきます。

僕の世代ならNHK教育テレビ(現Eテレ)「できるかな?」に出てくる「ゴン太くん」の声と言ったらすぐわかりますねw。いろんな表情の音を出してます。

他にもいろんな音が聴こえてきますが、僕はけっこう、パーカッションを気にしないで、これまでの電化マイルスを聴いてきました。

ですが、前回の「ブラック・ビューティ」でなにか物足りなさを感じていたのはブログにも書きましたが、その要因の一つが「ブラック・ビューティ」にはパーカッションがあまり聴こえない点にあるような気がしてきました。

いつも博識高いコメントをくださるTwitterフォロワーさまが、以下のリンクを教えてくださいました。

MILES DAVIS Black Beauty: Miles Davis at Filmore West review by js
MILES DAVIS Black Beauty: Miles Davis at Filmore West review by js

「ブラック・ビューティ」での話になりますが、「アイアートのパーカッションの音を拾うマイクのスイッチを入れ忘れた」的なことが書かれています。

実際には聴こえはしますが、ある程度比喩的に言っていると思われ、あまりパーカッションを叩いていないのですね。

これは「マイルス・デイヴィス自伝」でマイルスが語っているのですが、「『そんなに叩いたり、馬鹿でかい音を出すな。もっとバンド全体のサウンドを聴け』と言ったら、途端に何もやらなくなってしまった。で、今度は『ちょっとは叩けよ』と言わなきゃならなかった。」アイアートとのやりとりが記録されてます。

笑えるし、さぞ怖かったでしょうw。

もしかするとこの会話から、アイアート「ブラック・ビューティ」ではかなり控えめのパーカッションしか叩けなかったのかも・・・。

それに対してどうでしょう?本作「アット・フィルモア」では、かなりエレクトリック・サウンドをかきたてるような、効果的なリズムや効果音をアクティブにプレイしている印象がありませんか?

非常にパーカッションもこのマイルス・バンドには重要な役割を担っているのではないか?と気づかされました。

ついフロント楽器ばかりに耳がいってしまいますけどね・・・。そしてこの頃のライブは曲間が基本なく、一気通貫のスタイルが取られていますが、その曲間の転換時の「間」、「隙間」を埋めるのが、このパーカッションだと思います。非常に効果的だと思います。

他にも様々なパーカッション、笛、鈴など聴こえてきますが、それをすべてまとめて「マイルス・ミュージック」だと思います。

それはもう、ジャズでもロックでも、なににも属さない、新しい一つのジャンルだと思います。

そしてもう一つの2作の大きな違いは、「間延びのしない、テオ・マセロの編集」ではないかと思います。4日間のライブを凝縮して2枚にまとめた本作は、テオの技術なしには完成しなかった名作だと思います。

録音日時がたった二ヵ月の差ほどとはいえ、これら2点のアルバム、「ブラック・ビューティ」「アット・フィルモア」の決定的違いで、後者が優れたアルバムと言われる所以ではないか?と考えます。

「ブラック・ビューティ」は「日本先行」で「無編集ノーカット」が売りでしたが、それが若干、仇となってしまっているような気がします。

全般をとおして・・・

本作は電子楽器が導入され始めたMiles in the Sky(1968年)以降の「エレクトリック・マイルス」の2つある結論的アルバムの一つと考えています。

もう一つの結論は、次回のこのブログで取り上げるであろう「ライヴ・イヴル」(1970年)です。

この2つの作品でまた、ある程度マイルスの変化の終着点が形作られて、その次の「オン・ザ・コーナー」(1972年)に発展していくような、そんな位置関係だと僕は思っています。

でもリアル・タイムでマイルス・ミュージックを聴いてきたかたは、スリリングにニュー・アルバムが出るたびに心躍らせていたのだろうなと推測します。

時系列に聴きなおして、当時のファンの気持ちを追体験している気分ではいますが、どうしてもこの先に「オン・ザ・コーナー」がリリースされるとか、マイルスは長期休養に入るとか、知ってしまっている以上、その追体験にも限界はあるなあ、と思うようになりました。

いずれにせよ、本作はチック・コリアとキース・ジャレットが同時に在籍した一つのマイルス・ミュージックの結論を示した怒涛のライブ・アルバムだと言えそうです。

なにより、「マイルス・ディビスは喜んでもらうことに関して渇望していた」ということが、モーガン・エイメスさんというかたのライナー・ノーツに書かれています。

常に変化することは観客に「喜んでもらうこと」の探求だったろうと思います。

誰もやったことのない音楽を、またこのライブで完成させたマイルスを聴くのは毎回、とても楽しめます。

ただ・・・ただ・・・聴くほうもかなりパワーを使いますね・・・。体調が悪い時に聴くと、回復するか、ノック・アウトされるか、のどちらかだと思いますw。

次回もパワーを吸い取られるゴッツいアルバム(Live Evil)のご紹介です。楽しんでいきましょう!

 

 

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