【マイルス・デイヴィス】 Live at the Fillmore East (March 7,1970) It’ About That Time アルバムレビュー 考察53

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Live at the Fillmore East 概要

1970年(1970年代に突入!) Columbia

Wayne Shorter (マイルスとの最後の共演ss,ts
Chick Coreaelp
Dave Hollandb, elb
Jack DeJohnetteds
Airto Moreiraper

1970年の3月6日、7日にロックの殿堂と言われるフィルモア・イーストに初出演したときの2日目のほうの2セットを二枚組で収録したライブ・アルバムです。

あいかわらずのロック路線、ポリリズム、即興音楽の激しいライブをたっぷり楽しめます。ジャケットのデザインの幾何学的な感じとマイルスのでっかいサングラスがかっこいいです。

もうお馴染みになりました、ライブでは間髪入れずに次の曲へ、次の曲へと、メドレーになっており、疾走感があります。

アイアート・モレイラが加入したセクステットとなります。

基本的にはプロデューサのテオ・マセロのハサミは入ってないとされますが、大音量で聴くと曲間にむむ???ってなるところもあるといえばありますが、気のせいでしょうね。

録音日時とリリース時期について・・・Live at the Fillmore East (March 7,1970) It’ About That Time

1970年3月7日のライブを録音したものになります。

ニール・ヤングスティーブ・ミラーの前座だったという説があります。

リリースされたのはマイルスの死後10年の2001年です。

こんなにも長い期間お蔵入りしていたわけですが、録音からはるか30年経っているのに、たくさんのマイルス・ファンを惹きつけたことでしょう。

ビルボード・ジャズ・アルバム・チャートで3位に最高でランクインいたとのことです。それまではブートレグで出回ってはいたようです。

ウェイン・ショーターのマイルスとの最後の共演 Live at the Fillmore East (March 7,1970) It’ About That Time

1964年の「マイルス・イン・ベルリン」のライブ録音から参加した直後、E.S.P.(1965年)のスタジオ録音に参加してきたウェイン・ショーターが参加するマイルス・バンドとしては最後のアルバムとなります。

今まで共演したジョー・ザヴィヌル(key)などとウェザー・リポートの結成へとつながっていくわけです。

ウェザー・リポート - Wikipedia

なんだか淋しいですね・・・。

中山康樹さん「マイルスを聴け!Version7」の中で本作のショーターについて「ソプラノ・サックスを吹いているときはそれほどでもないが、テナー・サックスとなると、そのサウンドといいフレーズといい、完全に古くなっている」と書いておられます。

ここまでのいくつかの電化マイルスにおいて、僕はテナーよりソプラノ・サックスの音が相性がいいと個人的には思っています。

刺さるような音と、メローになった時の抒情的な音がソプラノのほうがエレクトリック・サウンドにはマッチしてると思います。

ですのでアルト・サックス自体は採用されていませんよね。

「古くなっている」という中山さんの考察には、言われてみれば、例の四部作のサウンドでは、相性が悪いと言えるかもしれません。

アイアート・モレイラがパーカッションで参加 Live at the Fillmore East (March 7,1970) It’ About That Time

基本編成はクインテットだったマイルス・バンドはこのライブではセクステットに。パーカッションにアイアート・モレイラです。

アイアート・モレイラ - Wikipedia

リンク先を参照しますとウェザー・リポートウェイン・ショーターチック・コリアポール・サイモンなど、巨匠たちとの共演多数のブラジル人です。

これが2枚目(2セット目)では飛び道具の笛(サンバ・ホイッスルではない?)を使い、僕のような浅はかな電化マイルス・ファンはこれでもう「くぅ~っ、たまらん!」(中山語w)になりますw。

会場の フィルモア・イーストについて・・・追記あり Live at the Fillmore East (March 7,1970) It’ About That Time

1968年から1971年に存続したライブ会場・・・

Fillmore East - Wikipedia

なんでこういう歴史的名所って、けっこうなくなっているのでしょう・・・。

いつかマイルスを訪ねてアメリカを旅してみたいもんですが、フィルモア・イーストプラグド・ニッケルブラック・ホークも残ってないです。残念。跡地に記念碑でもなにか残ってないでしょうかね・・・。

【追記】

フィルモア・イーストビル・グラハムというプロモーター(実業家、興行を促進する人)が経営する「ロックの殿堂」と呼ばれた会場です。

「イースト」と呼ばれるニューヨークに対して、「ウエスト」というのもサンフランシスコにありました。

こちらも1971年に閉鎖されているようです。

フィルモア・ウエストについてこちらの個人ブログのかたがリンク・フリーとのことなので2011年現在のその場所をご覧ください。イーストの2011年現在のことも同じかたがブログにされてますのでこちらをご覧ください。

フィルモア・イーストでのマイルスのライブ録音は、本作以外にも「ブラック・ビューティ」(1970年4月)、「マイルス・ディヴィス・アット・フィルモア」(1970年6月)があります。

楽曲を聴く・・・ Live at the Fillmore East (March 7,1970) It’ About That Time

①⑤ Directions を聴く・・・

すっかりこの頃のマイルスのオープニングを飾るのに定着しているこの曲。

前述のアイアート・モレイラの項でも書きましたが、2セット目の⑤の演奏の飛び道具「笛」の効果ったらないですね・・・。

ジョー・ザヴィヌルの作曲。メイン・テーマのメロディが両日とも少なく、豪快な各メンバーのソロをそのまま楽しめばいいと思います。

②⑧ Spanish Key を聴く・・・

1969年「ビッチズ・ブリュー」より、マイルスの作曲。全ての楽曲においてそうですが、スタジオ録音が原型であって、その日ごとのテンションとメンバーで構成されるパターンとアドリブに頭をぶち抜かれる感覚ですw。

すっごいドライブ感です。

③Masqualero を聴く・・・

1967年「ソーサラー」より、ショーターの作曲です。もう言われないと原型を留めておりませぬ・・・帝王さま・・・w。

ショーターの曲なのに、ショーターのテナー・サックスが入る余地が感じられなくなっているような気がします。

この辺が前述の中山さんのいう「古い」なのかなあ・・・。

でもショーターに花を持たせているような構成になっているようにも聴こえます。

⑥Miles Runs the Voo Doo Down を聴く・・・

1969年「ビッチズ・ブリュー」より、マイルスの作曲。

セカンド・セットのみの演奏。こちらも原型がわかりませぬ・・・。

この日はこの演奏。メンバーのバックに支えられてのマイルスのソロがビシバシ決まってます。

⑦Bitches Brew を聴く・・・

こちらもセカンド・セットのみ。1969年「ビッチズ・ブリュー」より、マイルスの作曲。

間髪入れる隙間もなく進む演奏に観客からの拍手が入る中、ずんずん始まる例のコール&レスポンス。

この曲ほど毎回のその日のメンバーのアドリブがどんなだったのか、楽しめる曲はないと思っています。

スタジオ録音された「ビッチズ・ブリュー」の項でも書いたと思いますが、このコールする「緊張」とドバ~ッと弛緩されるレスポンスの「解放」が僕的な聴きどころだと思います。

ずーずー♪ずー♪ずー--♪ じゃ~~~~~~~~~~~~~~ん!!♪♪♪

それがどんなメンバーで、どんなテンションで、アドリブされているか・・・各アルバムの違いがおもしろいです。

④It’ about That Time/The Theme を聴く・・・

1セット目の最後の曲。「イン・ア・サイレント・ウェイ」(1969年)より、マイルス、ジョー・ザヴィヌルの作曲

もとは「イン・ア・サイレント・ウェイ」という名曲で、テオ・マセロに編集させてくっつけてメドレーにしていた楽曲ですね。

気を抜いているといつ「ザ・テーマ」にいつつながったかがわからないままエンディングをきれいにまとめられて終了していまいます。

おもしろいなあ、かっこいいなあ、すごい編曲だなあと、いい意味で振り回されますw。

⑨It’ about That Time/Willie Nelson/The Theme を聴く・・・

2日間のオオトリを飾る、前項で記述したと同じ楽曲ながら、ショーターの6年間の最後のマイルス・バンドでの演奏です。

ウェザー・リポートはそう聴きこんではいない、ジャンルも異なるイメージでしたが、ここからのショーターの足跡にも非常に興味がわきます。

「ウィリー・ネルソン」はまだこのブログには登場していない未発表曲集のDirections(1960年~1970年のコンピレーション・アルバム)に1970年2月録音で、リリースされる曲です。

このライブ時点では未発表の新曲ということになります。

これまた最後の「ザ・テーマ」まで、変幻自在につながっていきます。

最後に観客をあおる例の「笛」・・・。「アンコール!アンコール!」と叫ぶ男性の声・・・。

「マイルス・ディヴィス・・・クインテット・・・」とMC(前述のビル・グラハムと思われる)が最後コール・・・。「セクステット」ですけどねw。

こうして本作は大盛況の様子で幕を閉じます。

全般をとおして・・・Live at the Fillmore East (March 7,1970) It’ About That Time

ハイテンションのセクステット。ショーターが最後というのがなんだかもったいないと感じながらも、中山さんの言う通り、マイルスの新しいビジョンと異なってきたのが随所に感じられるかもしれません。

でも次々と変化していった帝王と6年もの長期間、ともにしたショーターの演奏力と作曲能力はすごかったですね。

ショーター参加したてのE.S.P.の頃からは、このアルバムのような楽曲は、とっても想像がつかなかったのは、世間のファンだけでなく、マイルスもショーターも同じでしょう。

毎回これだけ変化するアドリブ、変幻自在のライブ・・・こんなフリーな音楽は他にもあるのでしょうけれど、アコースティック・ジャズしか聴いてないかたには、衝撃ですよ。

メロディだけでなく、バッキングやリズムすらフリーになっていくマイルス

本当におもしろいし、かっこいいし、頭を使わせてくれます。

しかしながらエレクトリック期はとくに書くのに苦労していますが、つたない文章にお付き合いいただき、今日もありがとうございました。<(_ _)>

 

 

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