考察75【マイルス・デイヴィス】Doo-Bop アルバムレビュー

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Doo-Bop 概要

1991年 Warner Bros.

僕はせっかちなところも時にはあるのですが、とかくマイルスを聴くことには一時、せっかち過ぎました。ひととおりマイルスの所謂、アコースティック期を聴き終わり、エレクトリック期を聴くようになった割と早い段階で、『マイルスの遺作』とかで検索して、本作『ドゥー・バップ』のCDを買いました。これを聴けば、なんだかマイルスの出した答えが分かるのではないか?と勝手に想像しました。

初めて聴いたときは衝撃でした・・・。ラップがフューチャーされているのでたいへん驚いたことを覚えています。マイルスは最後、ヒップ・ホップにまで音楽を広げていったのか・・・とびっくりしました。途中のエレクトリックのアルバムをすっとばして本作を聴いたので、違和感がありました。しかし、全般的にマイルスを聴いてくると、ヒップ・ホップにも及んだそのマイルスの才能や音楽的意欲にも納得がいくようになりました。

小川隆夫さんは本作のライナーノーツでプリンスと親交のあったマイルスが『ブラック・ミュージックの先端をいくラップに関心』を持つことはごく、自然なことだったろうと分析されています。

マイルスの生きた最後の年・・・1991年

『マイルスの遺作』といってもこのリリースされた状態が、マイルスの目指していた完成形であるかどうかは微妙です。1991年1月~2月にかけて本作は録音されました。後述するイージー・モー・ビーをプロデューサーに迎えての制作でした。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

それと並行してレギュラー・グループでの録音も行っていたそうです。それはいまだ未発表です。なんとマイルスがあのハスキー・ヴォイスでラップもやったらしいと、小川隆夫さんの『マイルス・デイヴィス大事典』に書かれています!

3月、マイルスは短いヨーロッパ・ツアーに出ます。本作とレギュラー・グループの録音作業は一時中断。この時、既にマイルスの体調はよいものではなかったそうです。

6月末、再度ヨーロッパ・ツアーへ。このライブ録音が『マイルス・デイヴィス・アンド・クインシー・ジョーンズ・ライヴ・アット・モントルー』(7月8日録音)となって後にリリースされます。

8月モー・ビーとの録音が再開。しかし体調は悪化し入院。

9月28日 マイルスは65歳でこの世を去ります。本作はゆえに未完成であるとみていいようです。

Easy Mo Bee について

ニューヨーク出身、1965年生まれの若いラッパーであり、プロデューサーであるイージー・モー・ビーとマイルスの出会いについては小川隆夫さんですら不明な点が多いようです。僕もまったく彼の音楽に触れたことはありません。

楽曲を聴く

本作は様々な音源をサンプリングして完成しています。そのへんをできるだけ小川隆夫さん著『マイルス・デイヴィス大事典』を参考に書いていきたいと思います。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

CDにはラップの詩と対訳も掲載されていますので、ぜひお手に取ってごらんください。

①Mystery を聴く・・・

マイルスとモー・ビーの共作。Chocolate Milk の “Running away”をサンプリングしているそうです。

②The Doo Bop Song を聴く・・・

マイルスとモー・ビーの共作。

① Kool & The Gang “Summer Madness”

② ”Chocolate Milk “Running away”

③ Slick Rick “la di da di”

3つの音源をサンプリングしています。ラップはR.I.F.という名のモー・ビー所属のラップ集団によるものだそう。

③Chocolate Chip を聴く・・・

マイルスとモー・ビードナルド・ヘップバーンなるキーボード奏者の共作。

① Young-Holt Unlimited  Bumpin’ On Young Street

② Pleasure Thanks For Everything

2つの音源をサンプリングしています。

④High Speed Chase を聴く・・・

マイルス、ラリー・マイゼルなる作曲家とモー・ビーの3人共作。

Donald Byrd “Street Lady” をサンプリング。マイルスの“Rubber Band”(1985年Mega Discよりリリース)の中の“Give It Up”モー・ビーがサンプリングしてマイルスの死後に完成させています。

 

⑤Blow を聴く・・・

マイルスとモー・ビーの共作。

James Brown “Give It Up Or Turn It a Loose”をサンプリング。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

ジェームス・ブラウンのこの楽曲は無料で公開されているものです。レコードやCDとしてはリリースされていない、珍しい形式です。

冒頭の音質が悪いが確かにマイルスの声が聴こえるのは、なんとマイルスがモー・ビー留守番電話に残した声だそうです!!知らなかった!!“Easy Mo Bee and Miles Davis are gonna blow”(『マイルス・デイヴィスとイージー・モー・ビーはブロウしてやるぜ』かな・・・)

後述しますが”Doo Bup Song EP”なるリミックス盤が後でリリースされていますが、そのアルバムの⑧曲目“Blow(Miles Alone)”小川隆夫さんがマイルス・ファンなら・・・とすすめておられますが、マイルスがトランペットを独奏していて、確かに唸らされます・・・。マニア必聴。

⑥Sonya を聴く・・・

マイルスとモー・ビーの共作。

『ソニヤ』と読みますがモー・ビーのガール・フレンドの名前だそうですよ。

⑦Fantasy を聴く・・・

マイルスとモー・ビーの共作。

Major Lance “Love Pains”をサンプリング。マイルスの“Rubber Band”セッションの時に録音されていた”Let’s Fly Away”という曲の中で、マイルスが吹くソロをモー・ビーがサンプリングしてマイルスの死後に完成させています。ラップの内容がお下品になっておりますので、詳しくはCD内の対訳をどうぞご覧くださいwww。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

このラップの内容は放送禁止的www。

⑧Duke Booty を聴く・・・

マイルスとモー・ビーの共作。

Duke Booteeというラッパーの綴りを変えたタイトルだそうです。“Sun City”(1985年)なるマイルスの非公式アルバムの“Let Me See Your I.D”という楽曲の作曲者でもあるそうですよ。

⑨Mystery(Reprise) を聴く・・・

1曲目と同じ曲に、80年代後期の『イン・ア・サイレント・ウェイ』のライブ録音から、オーディエンスの歓声をサンプリングしているそうです。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

小川隆夫さんによるとこの歓声は、マイルスのライヴで実際にアンコールされたときの音源であり、モー・ビーが亡くなったマイルスにもう一度演奏してほしいという願いと、リスペクトの念を捧げたものだそうです。So Cool!!

The Doo-Bop Song Ep というリミックス・アルバムの存在について・・・

本作の『ザ・ドゥー・バップ・ソング』『ブロウ』の2曲をさまざまな形にリミックスしたイージー・モー・ビーのマイルス・トリビュート・アルバムがリリースされています。僕はコレ、レンタルしてスマホに入れてあるのですが、非常に興味深い。中山康樹さんも『マイルスを聴け!Version7』で2枚のアルバムをあわせて聴くことによって、『マイルスとイージー・モー・ビーの世界はさらに拡大深化していく』と解説しておられます。これから僕も、より聴きこんでいきたいと思います。

全般をとおして・・・

いったいマイルスはこの後、どのような音楽をしようとしていたのでしょう。晩年、マイルスは絵画と音楽のコラボした活動も構想していたと言います。本当になにをして僕たちを驚かせてくれたでしょう・・・。想像するときりがありません。

マーカス・ミラーとの共作である『シエスタ』(1987年)『アマンドラ』(1988年~1989年)の時のように、イージー・モー・ビーとの強力なタッグによる本作は、まったくそれまでとは異質なアルバムとして、また『未完の遺作』として、世の中にリリースされました。それはマイルスのカリスマ性を高め、神格化させ、ドラマティックに彩っていると僕は思います。

このようなヒップ・ホップをフューチャーしたジャズ界の帝王が残したものが、確実にその後、アシッド・ジャズやハウス・ミュージックなど、多岐にわたり、多大に影響を与えていったことでしょう。その一つの好例として、知らないうちに買って聴いていたジャズ・ギタリストのロニー・ジョーダン“The Antidote”(1992年)は僕にとっても思い出深いアルバムとなっています。『ソー・ホヮット』がカバーされています。そしてロニー・ジョーダンのこのアルバムも、無数にリリースされたマイルス・トリビュート・アルバムの一つだったことを今さら知った、かなやまなのでした・・・。でもなんだか、点と点が僕の中でつながって、非常に興味深いところでもあります。

今回、ブログを書くにあたり、小川隆夫さんの『マイルス・デイヴィス大事典』を参考に、各曲のサンプリング音源を調べて初めて聴いてみて、普段はまったく聴かなヒップ・ホップですが、幅広い音源の採用にモー・ビーの能力を少し知れたような気がします。イージー・モー・ビーのファンのかたには逆にどのように聴こえるのかなあと思います。ぜひ、教えていただきたいです。僕だけでないでしょうけど、マイルスのトランペットがすごくヒップ・ホップ・サウンドと自然に融合して聴ける、マイルス晩年の傑作のひとつだと思います。

このブログの今後・・・

さて『ディグ』(1951年)から始まった僕の冒険、『勝手にマイルス考古学』もついについに、『ドゥー・バップ』まで終えてしまいました。ブートレグを除く主要マイルスの公式アルバムを勝手に書いてきましたが、まだクインシー・ジョーンズとのライヴ盤『ライヴ・アット・モントルー』(1991年)とマイルスのラスト・ステージを一部録音した『ライヴ・アラウンド・ザ・ワールド』(1991年)も一応、書いてみようかなと今は思っております。どうぞもう少し、お付き合いをいただければと思います。どうぞ、よろしくお願いします。そして今回もお読みいただき、誠にありがとうございます。

<(_ _)>

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

僕が発売から3ヵ月以上、小川隆夫さん著『マイルス・デイヴィス大事典』を

使い倒した記事はこちらからご覧ください。

 

 

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