【マイルス・ディヴィス】Siesta アルバムレビュー 考察72

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Siesta 概要

1987年 Warner Bros.

前作、『ツツ』(1986年)に続いて多才なマルチ・ミュージシャンであるマーカス・ミラーとの共同リーダー作となります、同タイトルの映画のサウンド・トラックです。

マーカス・ミラーがほぼ全てを作曲してさらに演奏もほぼ全ての楽器を担当し、マイルスが登場するのは10曲中7曲ほどです。一部、サポート・ミュージシャンが参加しています。

このようなスタイルであることから僕は本作を敬遠してほとんどCDを持っているだけの状態でした。さらに①曲目『ロスト・インマドリッド』の冒頭のいきなり『ジャ~~~~ン♪ジャ~~~~ン♪』のおどろおどろしい音が、いっきに『ハイ、後で聴く~』となってしまいます・・・。

ただそこを乗り越えて数十秒、マイルスのトランペットが悲壮感を漂わせながらもグっと胸に迫る音色を聴かせてくれます。

そしてそのまま②曲目『シエスタ~キットの口づけ~ロスト・イン・マドリッド(パートⅡ)』へ、かつてのスパニッシュ・キーを採用した大作『スケッチ・オブ・スペイン』(1959年)のように、スパニッシュ漂わせるギターの音色とマイルスのトランペットが入ってくると、『おお・・・?』と感心し、

③曲目『オーガスティンのテーマ~風~誘惑~口づけ』リヴァーヴたっぷりのサックスが入ってくると緊張感ある雰囲気に変化してハープ(シンセによる)が聴こえてきて・・・

なんてやっていると、いつのまにかトータル38分ほどの本作を聴き終わっているという不思議さ・・・。やっぱり、マイルスはいいな・・・そんなふうに思わせてくれます。

ですので冒頭の『ジャ~~~~ン♪ジャ~~~~ン♪』でくじけていた人、全般の悲しいサウンドに聴くのを辞めてしまった人に、もう少しだけ聴いてみてほしいと思います。

かくいう僕がそう思って聴いてなかった本人でありますw。 

でもそれはこうして、4ヵ月かけてマイルスを時系列に聴きなおしてきたからたどり着けたのかもしれません。非常にそれは長く険しい道のり・・・いえ、夢中になっているのでそんなに厳しい道中ではなかったのですが、すべての人がこんな風に、本作を聴けるようにはなれるとは限らないでしょう。

かの中山康樹さんも『マイルスを聴け!Version7』では『これほど悲しい演奏はない。世界中の孤独を一身に背負ったような、もうこれ以上の絶望はないというくらい』『深夜、これを聴いているとゾッとする』『美しいのだが、悲しすぎる』と、悲しみのどん底へリスナーが落ちてしまわぬようアドヴァイスをしてくれています。

さらに結びの一言は『聴くのは5年に1度にしよう』としていますw。散々ですね・・・w。

Gil Evans へ捧がれた・・・Siesta

この『悲しみのどん底』である本作は、リリース直前に亡くなったギル・エヴァンス捧げられていることも加味していただければまた少しは聴きやすくなるかもしれません。小川隆夫さん著『マイルス・デイヴィス大事典』によるとギルは本作の制作初期段階で『さまざまなサジェスチョンとアイデア』を提供していたそうです。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

『大事典』によりますと、ギル・エヴァンスの死後に出荷されたアルバムには

“This Album Is Dedicated To GIL EVANS, The Master” とクレジットされたとのことです。

映画Siestaについて・・・

1987年公開のアメリカ映画『シエスタ』。メアリー・ランバート監督。と言っても映画は苦手分野の僕ですのでもちろん、本作を見てはいません・・・。申し訳ありません。老後の楽しみにしようと思いますが、中山康樹さんは『この映画はつまらなかった』と前述の著作の中で切り捨てておられますw。

サウンド・トラックとしての本作 Siesta

『死刑台のエレベーター』(1957年)、『ジャック・ジョンソン』(1970年)に続くサウンド・トラックとなる本作。前述のとおり、マーカス・ミラーを中心に制作されてはいますが、マイルスのトランペットは必聴モノであることは言うまでもありません。

だっぷりと大音量で・・・全般をとおして Siesta

本作の悲しみを乗り越えるには前述の時系列にマイルスを聴いてくることで、かなり聴けるようになること。もう一つは【大音量で聴くこと】(冒頭の『ジャ~~~~ン♪ジャ~~~~ン♪』が終わってからwww)を当社は推奨しておりますw。

マーカス・ミラーの作り出したシンセサイザーやベースの音が聴きどころです。シンセサイザーはナチュラルなアコースティック楽器から真反対のサウンドではありますが、この時代のサウンドとしては胸に迫るものがあるでしょう。

そしてマイルスのトランペットの音は、これまた胸を熱く熱くさせます。アルコール度数の高いウイスキーを呑んだごとくの熱が聴き終わるまで残ります。

そして聴き終わると、『ああ・・・悲しい・・』。中山康樹さんがおっしゃるとおり5年に1度でいいかもしれません。次聴くときは僕は50代に突入しているのか・・・w。

前々作『オーラ』(1985年)が僕にとっての『ファースト・マイルス』(最初に聴いたマイルスw)だったように、本作は決してマイルスの聴き始め初期には『聴いてはいけない』に分類されるのは間違いございませんw。

最後に・・・小川隆夫さんは『マイルス・デイヴィス大事典』の本作解説の中で『<TUTU>から<シエスタ>を吹き込むまでの1年間で、マイルスは望むサウンドに近いものがライヴでも出せるようになっていた。

スタジオ録音でもそうだが、この時期でのライヴでは、聴くたびに変化が認められる』としていて、本作は『晩年における活動のターニング・ポイントに繋がる』とか、『(ワーナー時代のマイルスの)パズルを埋めるうえで欠かすことのできない一片』と評価されていて、マイルス者には欠かせないことを言及されています。

この時期のブートレグはなかなか研究のしがいがありそうです。これもまた老後の楽しみに・・・w。

 

 

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