考察74【マイルス・デイヴィス】Dingo アルバムレビュー

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Dingo 概要

1990年3月録音 Warner Bros.

きっぱりと断言しておくが、ここで聴かれる音楽は、マイルス自身のものではない。『ディンゴ』という映画における、ビリー・クロス(マイルスの映画内での役名)なる劇中の黒人トランぺッターの音楽なのだ。

中山康樹さん著 『マイルスを聴け!Version7』

『ディンゴ』(1995年公開)というフランス、オーストラリア共同映画になんとマイルスが出演し、ミシェル・ルグランとともに音楽を制作したという、なんともとんでもないマイルスのまた新しい変化とも言えるアーティスト活動ですね。ミシェル・ルグランとの再会アルバムでもあるのですが、そう騒ぎたてることもない・・・そう中山さんは続けます。『歴史上のマイルス』という人間を演じるのが趣味だったとこの時期のマイルスのことを分析しおられます。でもそのようなことは端っこに置いといて、僕は本作、けっこう楽しめるようになりました。ミシェル・ルグランの楽曲は素晴らしいし、マイルスのトランペットはやっぱり、聴いてて心地よいし、マイルス以外のトランペットが聴こえてくることなんじゃ?とすぐ気づけることが、おもしろさにもつながっています。

驚くべきはマイルスが伝説のトランぺッター役で出演し、あのハスキー・ヴォイスで演技までしてしまっているのです。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

マイルスは16トラックのうち9曲に参加しています。

Michel Jean Legrand との再会

ミシェル・ルグランと共同制作されたこのサウンド・トラックですが、ロルフ・デ・ヒールなる本作の映画監督との繋がりから、二人でマイルスを説得し、映画、サントラが完成したという経緯です。ミシェル・ルグラン・オーケストラにマイルスがトランペットと一部シンセサイザーで共演するかたちです。ミシェル・ルグランとの共作は1958年以来となります。

ここ4ヵ月以上、マイルスを時系列に聴き続け、とくに最近は所謂、ロックやファンク、フージョンのマイルス・サウンドを聴いてきたので、こういうジャズ・オーケストラのマイルスのトランペットを聴くと、なんだか感慨深いものがあります。きっとリアル・タイムでマイルスを聴いてきたひとたちは、もうこのようなスタイルでマイルスを聴けるとは思ってもいなかったでしょう。そのような驚きを、僕も追体験させてもらっています。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

マイルスには驚かされてばかりです・・・。

それが魅力でもありますね。

楽曲を聴く

冒頭ご紹介した中山さんの『マイルスのものではない』というのは、とりあえず置いておきましょう。けっこう楽しめます。かくいう僕も、ジャケットのなんだか暗いデザインと、中山さんの解説であんまり聴いてこなかったサントラではあるのですけどね。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

全曲、ミシェル・ルグランの作曲です。マイルスの楽曲はありません。

鳥のさえずりとともに、ゆっくりと始まる本作の①曲目Kimberley Trumpetは、おや?とは思っていましたがマイルスではなくチャック・フィンドレーというかたのトランペットなんですね・・・。

②The Arrival を聴く・・・

前曲とはやっぱりことなる音色のトランペットの独奏から始まるこの曲はやはり、マイルスの演奏です。この映画のメイン・テーマとなる楽曲です。おお・・・小川隆夫さんの『マイルス・デイヴィス大事典』によると『オーストラリア映画協会賞、作曲賞』を受賞と書いてあります。

③Concert On The Runway を聴く・・・

マイルスがビリー・クロスなるトランぺッター役になって自己紹介をしている冒頭のハスキー・ヴォイスから始まり、スピーディな4ビートのモダン・ジャズ曲へ。『ソー・ホワット』のようにコードが2つだけで、しかも半音ズレだけ・・・のシンプル進行にマイルスのトランペットを聴けるので、僕はもう、ゾクゾクしっ放しです♡。

④The Departure を聴く・・・

マイルス(ビリー・クロス)が少年と音楽について会話していますね。出会いのシーン。やがてメイン・テーマが聴こえてきて、飛行機の音とともにマイルスは出発をしていくシーンです。非常にメイン・メロディが秀作であることがわかります。

⑦Trumpet Cleaning を聴く・・・

マイルスの楽曲には『トランペット』をタイトルにしたものがないことに気が付きます。明らかに前曲と異なりマイルスのトランペットだとわかりますよね。ええ・・・マイルスが昔のジャズ・スタイルを吹いてくれていることだけで僕は聴きごたを感じております。

⑧The Dream を聴く・・・

テーマ曲をさらに優しいタッチで演奏し、途中、三拍子に変化させ、劇中にマッチするようにされていますね。

⑩Paris Walking Ⅰ を聴く・・・

軽快なウォーキング・ベースにのってくるマイルスのトランペットに、次第にオーケストラも加わっていく、これまた往年のジャズ・スタイル。劇中にあわせて作成されたショート・トラック。え!?⑪曲目の『Ⅱ』は、どうやらマイルスのミュート・トランペットではないのですね・・・。精進します・・・orz。

⑫The Music Room を聴く・・・

マイルス(ビリー・クロス)が自宅スタジオで演奏するシーンだそうです。大人になった少年ディンゴとの会話。ピアノを弾くのはマイルス。最後のセリフは『トランペットはもう、吹かないよ』

⑭The Jam Session を聴く・・・

本作、聴きどころのテーマ曲ともう一つは間違いなくこの楽曲。映画のクライマックス・シーンの部分だそうです。明らかにマイルスではない人物(チャック・フィンドレー)のトランペットで演奏されていきます。拍手喝采と歓声で途中、参加しだすミュート・トランペットがマイルス演じるビリー・クロスの演奏ですね。エレクトリックマイルスを聴いてばかりの最近だったので、なんだかこのサウンドも落ち着きますw。

⑲Going Home を聴く・・・

メイン・テーマのメロディにしっとりと戻り、このサントラは幕を閉じます。

全般をとおして・・・

マイルスには驚かされることばかりでしたね。映画の出演と演奏・・・。中山康樹さんの『マイルス・デイヴィス完全入門』では、『聴いてはいけない』(マイルスを聴き始めの初期には・・・という前提つき)にノミネートされているアルバムであることから、敬遠していました。

とてもジャズを聴くことが・・・、マイルスを聴くことが・・・楽しいと再認識させてくれるサントラは他になかなかないのではないかと思います。確かに本作をマイルスやジャズの聴き始めの初期に聴いて、『これがマイルスだ』とは決して思ってくれるな、というのは誰もが共通だろうと思います。繰り返しになりますが、ミシェル・ルグランの楽曲もいいし、マイルスのトランペットも素晴らしい。

なんといっても時系列に聴いてきて、また往年のジャズ・サウンドをマイルスが吹いてくれたことに僕は素直に喜びます。常に振り返ることはなかったマイルスと言われますが、『本作を振り返ってしまった』と考えるより、また僕らを驚かせるべく、『映画出演・・・それも伝説のトランぺッター役!』という、十分大きな新しい変化をしたマイルス・・・。ますます本作でマイルスの魅力を感じました。また、所謂、アコースティック期を聴きなおすことが楽しみですし、このあと当ブログでも取り上げるであろう『マイルス・ディヴィス・アンド・クインシー・ジョーンズ・ライヴ・アット・モントルー』(1991年)も、先入観を捨てて、『マイルスが過去を振り返った』と若干、低評価されるアルバムを楽しみたいと思います。

あ・・・ちなみに、映画はあんまり見ない僕ですが、本作も観てません・・・。なんとなく、小川隆夫さんの『マイルス・デイヴィス大事典』を読んで、ストーリーもある程度予想できましたし・・・。でも老後の楽しみリストの早めのところに、この映画を追加しようと思います。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

マイルスは素晴らしい!マイルスのプレイに愚作なし!

 

 

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

僕が発売から3ヵ月以上、小川隆夫さん著『マイルス・デイヴィス大事典』を

使い倒した記事はこちらからご覧ください。

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