考察76【マイルス・デイヴィス】Miles Davis & Quincy Jones Live At Montreux アルバムレビュー

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Miles Davis & Quincy Jones Live At Montreux 概要

1991年 Warner Bros.

1993年8月、マイルスの逝去から約2年後に本作はリリースされました。2年の月日を経てマイルス・ファンたちはこのライヴ・アルバムをどのように受け止めたのでしょうか。もちろん遺作とされる『ドゥー・バップ』(1991年)の後にたくさんのブートレグやマイルス・トリビュート・アルバムがリリースされたようです。本作はワーナー・ブラザーズから公式盤です。

録音された場所と日時

本作が録音されたのは1991年7月8日。マイルスの逝去まで3ヵ月を切っていた頃となります。場所はスイスで、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルでのものとなります。

ちなみにこの2日後の7月10日にウェイン・ショーター(ts)やハービー・ハンコック(p)などとのかつてのメンバーと共演したステージも行っており、“The Last Supper Live At La Villette 1991”なるブートレグで聴くことができるのです。こちらは動画もありますのでたいへん楽しめます。

Quincy Jones との共作

本作はマイルスがクインシー・ジョーンズと共同で制作したステージの録音です。ギル・エヴァンス・オーケストラジョージ・クランツ・コンサート・ジャズ・バンドの2つのビッグ・バンドを融合、指揮し、マイルスと共演しました。それがファンを驚かせました。エレクトリック・サウンドから離れたビッグ・バンドとの共演、さらに曲目もかつてのギル・エヴァンスとの共作『ポーギー・アンド・ベス』(1958年)、『スケッチズ・オブ・スペイン』(1959年~1960年)などからで、観衆はたいそう驚いたそうです。それもそのはず、それまで決して振り返ることのなかったマイルスが、この日は振り返ったように捉えらたからです。それはまるで、マイルスが自身の死期を予見していたかのようです。

しかし、実情はそんな劇的なものではなく、クインシー・ジョーンズがマイルスのふっかけてきた高額でありえないほどのギャランティーの要求に『ほんとうのホントだな?』と言って飲んだことから始まったようなんですね・・・(中山康樹さん著『マイルス・デイヴィス完全入門』より)。中山さんは本作で演奏されたかつての楽曲を、このライヴ録音で聴くのではなく、故ギル・エヴァンスと共同制作したアルバム自体で聴くべきとおっしゃっています。なるほどな・・・。僕なんかは最近、時系列にずーっとマイルスばかり聴いてきたので、エレクトリック・サウンドから離れ、ジャズ・ビッグ・バンドのゴージャスでおおらかなサウンドにここ数日、『やっぱりジャズはいいな~』と単純に思ってましたけどね・・・。こんな大編成のバンドでマイルスと共演するというのは、少ない音で芸術を作ってきた故ギル・エヴァンスの遺志にも反するという理由を中山さんは指摘されています。なるほどな~。真のジャズ評論家は違うな~。

楽曲を聴く

①Introduction

クロード・ノブスと指揮者でありリーダーであり、ホスト役であるクインシー・ジョーンズがマイルスを迎えステージの開幕を宣言する華々しいMC。いいじゃないですか・・・お祭りの始まりです!

②Boplicity を聴く・・・

まだ当ブログでは取り上げてはいない『バース・オブ・ザ・クール』(1949年)で、かつてギル・エヴァンスのもとマイルスが演奏した名演から。

③Introduction to Miles Ahead Medley~④Springville を聴く・・・

『マイルス・アヘッド』(1957年)での名演を再現したトラックは、初めてこのヴァージョンを聴いたときに僕自身、ニンマリしてしまったことを忘れられない。『マイルス・アヘッドの思い出を・・・』と紹介されると、観衆からはどよめきと拍手がおこります。あの激しい電化マイルスからこの演奏のマイルスへの落差に驚いてしまう。弱弱しくも聴こえるマイルスですが、マイルスがオーケストラの前で『スプリングヴィル』を演奏してそこに存在するだけで、もうこのオーラはすごいと思います。

⑤Maids Of Cadiz ~⑥The Duke~⑦My Ship~⑧Miles Ahead を聴く・・・

『マイルス・アヘッド』(1957年)より再現。セカンド・トランペットにウォレス・ルーニーなるトランペッターに吹かせているのが、やはりこの時期のマイルスなのか・・・。ときにか細くなる音にもマイルスの晩年を感じると言ってもいいでしょう。しかし、それでもマイルス。往年の名演の再演は僕たちを楽しませます。メドレーで続くデイヴ・ブルベックの名曲『ザ・デューク』でも観衆からのどよめきがおきます。

⑨ Blues For Pabblo を聴く・・・

これって『スケッチズ・オブ・スペイン』(1959年)の曲じゃなかったっけ???

『マイルス・アヘッド』(1957年)より。

小川隆夫さんの『マイルス・デイヴィス大事典』に書いてあって気づきましたが、マイルス途中、音がうまく出せずウォレス・ルーニー(tp)がサポートして吹いているのですね・・・。それでも万雷の拍手が起きるのは、マイルスならでは・・・。存在するだけでもマイルスには拍手が送られるのです。

⑩Introduction to Porgy And Bess Medley~⑪Orgone~⑫Gone,Gone,Gone

『ポーギー・アンド・ベス』(1958年)よりとの紹介でまたまた歓声があがります。観衆もおもわずあちこちで拍手を送る演奏に次第に熱を帯びていく演奏に聴き入ります。

⑬Summer Time を聴く・・・

元ネタである『ポーギー・アンド・ベス』(1958年)でもハイライト曲であったろうこの曲は、僕にとっても本作の最も聴きどころと思います。元来、孤独感を駆り立てるメロディですが、思わず観衆はリズムにあわせて手拍子をしてしまう・・・エレクトリック・サウンドから解放され待ち望んでいたかのような反応です。ケニー・ギャレット(as)のソロも聴かせます。

⑭Here Comes De Honey Man を聴く・・・

『ポーギー・アンド・ベス』(1958年)より。マイルスはビッグ・バンドと共に、とくにソロをとるわけでもなく、繰り返されるメイン・メロディの美しさに耳を傾けましょう・・・。

⑮The Pan Piper~⑯Solea を聴く・・・

『スケッチズ・オブ・スペイン』(1959年)より。僕の苦手としている『スケッチズ~』だが聴きなおしてみようという気にさせてくれる、マイルスのトランペットの短いソロから『ソレア』へ。フィナーレをドラマティックに飾る最後の聴きどころ。これまでのジャズ・オーケストラへの苦手意識を払拭してくれる演奏に僕は観衆とともに拍手を送りますwww。

『ジャズは素晴らしい!』

全般をとおして・・・

でもさ、中山さんよ・・・。やっぱり、『ジャズ・フェスティヴァル』じゃないか・・・。『お祭り』もいいじゃないですか・・・。かつての楽曲をマイルスがやっても・・・。いいじゃないですか、クインシー・ジョーンズがやってみたかったことをやってみたら、こうして語りあえるマイルスの最晩年ライヴ演奏を古い楽曲を聴くことができる・・・。やっぱり、マイルスはいいなあと・・・語りあおうではありませんか。で、やっぱり、マイルスが過去を振り返ったことは、マイルスの終わろうとしていた人生に、マイルスなりのサプライズというプレゼントを添えてくれたものと僕は信じます。マイルスはトランぺッターであり、アーティストであり、やっぱりアイドルでもあり、エンターテナーでもあったんだろうと・・・。そして伝説になるべく、一つひとつの演奏や絵画が、こうして死後30年以上経過しても語り継がれていくのでしょう。

全部聴きなおし終わって・・・中山さんの言うように本作よりも、かつての元の演奏の数々を聴きなおすべきかもしれないと思いました。それはやはり、ギル・エヴァンスが生き生きとそこに存在したからなのかもしれません。苦手としていたギル・アヴァンス・オーケストラを再度、聴きなおしてみようか・・・今なら気持ちよく、楽しめるようになっているような気がする・・・明らかにこれまで、約4ヵ月以上にわたり時系列にマイルスばかりを聴きなおしてきて、僕の耳が変化していることに気が付きました。

このブログのつづき・・・

『ディグ』(1951年)から始まった考察の番号も76となりました。ここで終わりとするのもいいのですが、『ライヴ・アラウンド・ザ・ワールド』という1988年~1991年のライヴをスポット的に収録したアルバムがワーナー・ブラザーズからリリースされています。次回はそれについて書いていこうと思います。なんせ公式盤として、マイルス・ディヴィス最後のステージを収めたアルバムですので、これを書かないわけにはいかない・・・かなと思うんです。もう少し、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

<(_ _)>

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

僕が発売から3ヵ月以上、小川隆夫さん著『マイルス・デイヴィス大事典』

使い倒した記事はこちらからご覧ください。

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