【マイルス・デイヴィス】Miles in the Sky  アルバムレビュー 考察47 

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Miles in the Sky 概要

1968年 Columbia

Wayne Shorterts
George Bensonelg
Herbie Hancockelp,p
Ron Carterelb,b
Tony Williamsds

実質の電子楽器を採用してのマイルスのアルバムはこれが最初となります。

リアル・タイムで黄金クインテットの四部作を聴いて、本作をレコード・プレイヤーにかけたかたは、いったいどんな印象を抱いたのでしょう?

その時の世間の評判は、いったいどんなだったんでしょう?

「マイルスが電子楽器を採用したぞ!」と言ったでしょう・・・。その後に続く言葉は・・・

①「もう聴いてたまるか!こんなもん、ジャズじゃねえ!!」

②「ますます聴かねばならん!どう変わったんだろう!?」

残念ながら僕はその時代、生を受けてもなく・・・。

きっとスリリングだったことでしょう・・・。

前回にレビューしました「ウォーター・ベイビーズ」を一応、時代に沿ってなかったものとして、本作ではハービー・ハンコックがエレピを、ロン・カーターがエレクトリック・ベースを一部採用します。

そしてここでワン・ショット・・・ジョージ・ベンソンエレクトリック・ギターが2曲目だけ聴かれます。またまたレジェンドのご登場です。

エレクトリック・ピアノ Fender ローズについて・・・Miles in the Sky

今回ブログを書くにあたり、初めて耳にした楽器が僕にはあります。

それはフェンダー・ローズです。

ローズ・ピアノ - Wikipedia

詳しい解説は上記、リンクのWikipedia先生にお願いするとしますが、何回か、マイルスの自伝やなにかでもチック・コリア「フェンダーローズを弾かせた」とマイルスは言っています。

フェンダーというとイメージ的にはギター、ベース、アンプかなと思ってましたが、解説を読んで納得。

ああ、あの音か~と。

なんとピアノと同じくハンマーで弦を叩いて振るわせて、それをピックアップ(エレキ・ギターの弦振動を信号化して拾うマイクみたいな役割の機器)で拾うという、これまた過渡期な楽器が使われていたのですね。

アナログとエレクトリックの合間みたいな感じでいい音ですよね。

マイルスは自伝の中で

「キャノンボール・アダレイと一緒だったジョー・サヴィヌルが『マーシー・マーシー・マーシー』をエレクトリック・ピアノで弾くのを聴いて、オレはそのサウンドが大いに気に入った」

と言ってます。

マーシー キャノンボール - 検索 動画

いい音ですね・・・。

実は既にビートルズのアルバム「レット・イット・ビー」の中でも聴いていたりする楽器だったんですね。勉強になります。

しかし、久しぶりの「マーシー・・・」いいですね。このあったかいフェンダー・ローズ・・。

楽曲を聴く Miles in the Sky

Stuff を聴く・・・

ショーター作曲です。

機械仕掛けか?プログラミングされたメトロノームが、彼らには埋め込まれているんだろう・・・なんでしょう?このリズム感はいったい、神ですね。

最後のトニーのテクニカルなまま若干フェードアウトするようなエンディングは、試作段階のままリリースされたように聴こえますが、きっとそんなことはないのでしょう。僕の感性が不足してます。

僕的には17分の長時間の繰り返しの末を見届けたくなる不思議な楽曲。

リリース当初になんの情報もなしにこのレコードを買って針を落として聴こえてきたのがこのミドル・テンポのサイケな感じ?どう思ったでしょうねえ。

ロンがエレクトリック・ベースを、ハービー・ハンコックがフェンダー・ローズ(覚えたての言葉を使いたくなる件w)を弾いて、新スタイルとなりました。

Paraphernalia を聴く・・・

ショーター作曲です。

「パラフェルナリア」と読みます。

ジョージ・ベンソンエレクトリック・ギター(フルアコ)の登場です。

僕的には大好物なギターの音色です。

このブログを始めてからは99%聴く音楽はマイルスに偏ってしまいましたので、フルアコがとても懐かしく、久しぶりにいい音だなあと思いながら聴きました。

ギターをちょっとかじる者としては、本当に理想的なギターのサウンド・メイクです。

ショーターのバッキングもわずかな音数なのに効果的で、もう少しソロを聴きたいくらいです。

マイルスは本当はギターをもっと取り入れたかったと自伝の中で言っています。

ジョージが忙しくて叶わなかったそうです。

わずかこの1曲だけの共演ですがレジェンド×レジェンドを楽しみましょう。

ジョージ・ベンソン - Wikipedia

Black Comedy を聴く・・・

トニー・ウィリアムスの作曲。

単純シンプルなメイン・メロディに激しくトニーが鳴らします。

その上を各ソロイストがめいいっぱいプレイし、ここ最近のスタイルにハンコックがエレピをプレイしているという過渡期的な楽曲。

Country Son を聴く・・・

いくつかのセクションにわかれているマイルスの作曲した「組曲」とでも言えましょうか。

お祭り騒ぎで始まります。何事でしょう?

曲調が4ビート、スウィンギーなシャッフルになったり、変化を繰り返します。それを一つの世界観にしているのはマイルスの作曲能力でしょう。

マイルスの独奏により、最初の曲調に戻りますが、次第に激しくなるトニーのドラムスとそれに呼応するメンバーが高揚感を生み出していきます。

このスウィングしてる箇所が好きなら、過去のものや、他のアーティストのスウィング・ジャズを聴けばいいのですが、なんかこの曲を聴いてしまう自分に気づきます。

マイルスがエレクトリック楽器を採用した理由とは???

まず時代背景を考える・・・

やはり考えてしまう、なぜこのタイミングで、マイルスはエレクトリック楽器を採用していったのだろう?ということ・・・。

「レコードの売り上げやコンサートに来る客の数を見ても、ジャズはそうした成功とはほど遠いところにあった。」と自伝の中で、マイルスは本作の前後を振り返ります。

ボブ・ディラン、スライ・ストーン、シカゴあたりがマイルスの自伝で帝王から口に出た当時の売れていたミュージシャンたちでした。他にもビートルズやストーンズマーヴィン・ゲイなどなどの存在もあったでしょう。

ジャズは苦境の時代に入り始めていたのです。マイルスのライブも会場キャパの半分なんてこともあったと言っています。

「マイルス・デイヴィス自伝」から・・・

マイルスがエレクトリック楽器を採用した理由を考えるうえで、「マイルス・デイヴィス自伝」は帝王本人の証言が得られますので、とても重要となります。

前述のとおり、時代背景としてはロックが世間を席捲していた時期で、ジャズは根強い人気はあれど、ロックのようにレコードが急激に販売量が増えるということはとても困難となっていました。

そこで自伝より重要な文を引用します。

アコースティックの代わりに、その時オレが聴きたかったサウンドがそこにあったということだ。ミュージシャンは、自分が生きている時代を反映する楽器を使わなきゃダメだ。自分の求めているサウンドを実現してくれるテクノロジーを活用しなきゃならない。エレクトリックが音楽をダメにすると考えている純粋主義者はゴマンといるが、音楽をダメにするのは、どうしようもない音楽そのものなんだ。ミュージシャンが選択した楽器が、音楽をダメにするわけじゃない。

「マイルス・デイヴィス自伝」 358ページより

僕が勝手に考えた「マイルスがエレクトリック楽器を採用した理由」とは・・・

時代がロックに席捲されていたとしても、それは「エレクトリック楽器を使っていた」という理由で、ロックの彼らが売れていたわけではなく、彼ら自身の音楽力がもともと非常にあったというにすぎないというふうに、マイルスは捉えていたと、上記の自伝の中の引用から僕は読み取りました。

いかがでしょうか?

だからマイルスは時代にあわせてテクノロジーを活用した楽器を用いても、絶対の自信があり、ロック・ミュージシャンを超えるものを作れると確信を持って、エレクトリック化を進めていった。

「マイルスの言う「自分の求めているサウンド」が、偶然にもエレクトリック楽器の中にあった・・・そう僕は考えます。

また以下の中山康樹さんの下記リンク先のインタヴューをお読みいただくとおもしろいです。

ジミ・ヘンドリックスとの交流は異なるジャンルながら有名ではありますが、親しかったのに共演は実現しなかった理由も中山さんがお話しされていて、たいへん貴重なインタヴューだと思います。

「エレクトリック・マイルス」 中山康樹さんに訊く
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Miles in the Sky 全般をとおして・・・

さて、本作を振り返りますとエレクトリック化への過渡期という言葉がぴったりそうに僕は思っています。

まだ準備段階なのに、魅力的な4曲と、サイケデリックを感じさせるジャケット・アートにマイルスの変化への欲求を感じずにはいられません。

ジミ・ヘンドリックスジェームス・ブラウンの影響を受けていたことを連想させるようなところも感じられます。このあたりで3回目のご結婚の相手ベティ・デイヴィスの影響もうけています。

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

ベティ・デイヴィスは女性版スライン&ストーンといったところ。

この先に世紀の名作、或いは問題作と言われる「ビッチズ・ブリュー」があることを僕は知っていますから、ああ、こういう道を辿ったんだなあと、史的観点から聴いて楽しい限りです。

それと蛇足とはなりますけれども、本作と次作の「キリマンジャロの娘」なんですが、PCに向かって仕事をしながらも繰り返し、スマホから音を出して聴いていたんですが、これが意外にもいいんですね・・・。

(オフィスに誰もいないのがわかってたので、iPhoneをある程度の音量で鳴らしてみました)

なんでしょう・・・このスピーカーでなくても「む~ん、マイルスぅ~」と思えるのは・・・。

iPhoneってけっこうそのままでもクリアーには音を鳴らしてくれますよね。ただし、ベース音にはまったく期待はできません。

でもこの繰り返す楽曲と、フェンダー・ローズの揺らめいた音が、なんだか多少のチープさがあっても、かえってサイケデリックに聴こえると言いましょうか・・・。

マイルスが天国から「そんな聴き方すなー!!」って怒るかもしれませんけど。

マイルスが生きている時代にiPhoneがあったら、間違いなくすぐ使っていたでしょうね。「テクノロジーを活用しなきゃならない」って言ってますもん!

エレクトリック創世記のマイルスを、きちんとしたオーディオでなくても聴けるかもしれません。

ポータブルなBluetoothスピーカーでしか音楽を聴かない人、スマホ、PCでしか音楽を聴かない人は、意外と本作からマイルスを聴き始めるのもアリかもしれない、と思いました。だってかっこいいんですもの。

(でも僕はいつものオーディオで聴いていきます)

マイルスの芳醇な世界への入り口は、スマホでグッと広がったのかもしれません。

これはマイルス・ファンを増やすチャンスでもありますね。

最後にお知らせ・・・今後のエレクトリック期は更新頻度が落ちてしまいます・・・

話はかわります。

ここまで60以上の記事をしたためてまいりまして、温かく見守ってくださっている皆さまのおかげ様でここまでやってこれました。

一重に皆さまのおかげです。まことにありがとございます。

しかし、僕にはこのブログのアキレス腱がございます・・・。

それは今後のエレクトリック期のアルバムは「聴いている頻度が低め」ということです。

最初は古くからあるジャズ・スタイルの時期を聴き入ったからこそ、マイルスのエレクトリック期を含め、帝王の生涯にも興味を持ち、CDを聴いて、書籍やネットを読んで、そしてブログに書く、ということをしてきました。

しかし、やはり圧倒的に聴いている回数がいわゆる、「アコースティック期」と比べて、「エレクトリック期」は少なくなってしまっています。

ですので、更新に時間がかかるかもしれませんし、拙いブログがますます、頼りないものとなるかもしれません。

そんなときは、どうか優しい目で、「ちょっと教えてやるか~」くらいのお気持ちで、コメントなどいただけたらと思います。

ここからは僕の目標「真のマイルス者に、オレはなる!」に向けての、よちよち歩きの成長過程を皆さまに露呈していく、恥ずかしいブログになるかもしれません(既になっているとも言えます・・・)。

ですが皆さま、どうか温かく見守ってやってくださいませ。

今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。

<(_ _)>

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