Kind of Blue 概要
1959年 Columbia/Legacy
Cannonball Adderley | as |
John Coltrane | ts |
Bill Evans | p |
Paul Chambers | b |
Jimmy Cobb | ds |
Wynton Kelly(②) | p |
ジャズ界の最高峰の一つのアルバムです。文句なしでしょう。
メンバーいわゆる、黄金セクステット。
そして2曲目だけピアノにウィントン・ケリーが登場します。
かなやま
なぜ2曲目だけウィントンが参加したのか・・・?それは楽曲について1曲ずつ1見出しで書いていこうと思うのでそこで書いていこうと思います。
そしてビル・エヴァンスはこのレコーディングをもって完全にマイルスバンドを退団します。
今なおレコードが新品でも売れるという超がいくつもつく名盤『カインド・オブ・ブルー』。
中山康樹さんの『マイルスを聴け!Version7』のこのアルバムの解説の冒頭を引用します。
バイブルにしてモダン・ジャズの聖典、そしてこれを聴かずしてマイルスは、モダン・ジャズは語れない。これこそ20世紀のジャズが到達しえた最高峰なのだ。
~中略~しかしジャズとは、なさけない音楽である。100年におよぶ歴史のなかで、これ1枚しか生み出せなかったのだ。『カインド・オブ・ブルー』に匹敵する作品は、ジャズのどこを切っても出てこない。ジャズよ、なにをやっていたのだ。
~中略~『カインド・オブ・ブルー』、このたった1枚のために、ジャズという音楽は未来永劫、胸を張って生きていけるのである。
マイルスを聴け!Version7 P144
中山さんですらこの解説の続きで『言葉を失っている』と書いておられます。
Kind of Blue というタイトルについて
オリジナルの収録5曲全般に“Blue”がついています。”kind of ~”というと『ちょっと~』みたいな意味が適当かと思いますが、タイトルですし前後の文脈があるわけではないので”Kind”の『優しい』って意味や『類』って意味も入れてまとめて”Kind of Blue”でいいでしょうと勝手に思います。
『ちょっとブルーなの・・・』みたいな感じが最適でしょうか。
Kind of Blue 楽曲を1曲ずつ聴く・・・
1 So Whatを聴く
So What について・・・
マイルスの作曲。
マイルスの口癖だったというのはどこにもそれを証明するものは見当たらないのですが、”So What?”はマイルスの口癖だったということは、あちこちに書かれています。
友人から聞いたのは、セッションをしていたマイルス達、この曲のセッションを終えてマイルスに曲名は?と聞かれて『決まってない』と答えた。題名がないなんておかしいじゃないかと言われて『ソー・ファット?(それが何か?)』と答えたからこのタイトルになった・・・とか。
素敵なエピソードですね・・・。
かなやま
この曲は
Dm7とE♭m7のたった2つのコードで完成しています。
前の記事でマイルスのアルバムや曲を「絵で例えるなら『水墨画』のよう」と書いたら共感していただいた僕の少ないTwitterフォロワー様のおひとりがいらっしゃいますが、まさにこの超シンプルなキャンバスに白と黒だけで描く絵のような・・・。
ひたすら繰り返されるこの伴奏ですが・・・クールながらも徐々に熱を帯びていくこの曲はたまらないですよね。ベースとピアノで奏でるイントロのゾクゾク感。リズム隊のバッキングにホーンとピアノがレスポンスする独特の節回し。
マイルスのミュート・トランペットが入ってきて少ない音数で進行し、ビル・エヴァンスのピアノも効果的に伴奏に徹し、それぞれの楽器が華麗にソロをとり・・・
ああああ・・・いいなあ。何度聴いてもいいなあ。やっぱり大音量でぜひ・・・!!
So Whatについて 僕の個人的見解
実はこの名曲を初めて聴いたのは学生時代、ジャズ・ギタリストが録音した”So What”でした。
現代ジャズ・ギタリストの最高峰の一人、ロニー・ジョーダンです。
なにを聴いていいかもわからず、お金もそうなく、インターネットもこんなに普及してなかった頃、CDショップ(多分HMV)でJAZZコーナーに行ってジャズを聴いてみたい、とくにジャズギターを聴きたい!って思って買った1枚だと思います。
原曲よりこっちのほうを先に聴いていました。で、ライナーノーツを見てマイルスの曲だというのを知ったのだと思います。
もしかしてこのギタリストに出会わなければ、僕はギターも弾かず、音楽もマイルスも聴かずに、音楽が生活にはない、ただのサラリーマンになってたかもしれません。
いきなりごりごりのビバップとか聴くより、ロニー・ジョーダンのようなラップや打ち込み、スクラッチなどの入った現代ギターのほうが当時の僕にはしっくりきてたのでしょう。
このCDは手放すことなくずっと棚にありますし、スマホにも入っているし、時々聴いているような気がします。原曲と比べたり、当時の自分の聴き方と今のそれと比べたり・・・。時空を超えて音楽は楽しいですね。思い出が深い1曲です。
2 Freddie Freeloader を聴く
マイルスの作曲。
小川隆夫さん著『マイルス・デイヴィス大事典』によると、このアルバムの制作段階の1959年5月は既にビル・エヴァンスはマイルス・バンドを退団していたタイミングだそうです。そこで前述のようにウィントン・ケリーがピアノでこの曲だけ参加しているわけですが。
小川さんによるとマイルスはよく同じ楽器奏者をバッティングさせて競い合わせるということもしばしばだったとか・・・。なんと恐ろしい帝王w。一流はそれくらいするんでしょうか。
で、このレコーディング前のセッションからウィントンがピアノを務めていたのですが、退団していたにもかかわらずビル・エヴァンスをレコーディングにマイルスが呼んで、ウィントンが拗ねたというようなことが大辞典には書かれています。
そこでレコーディングされたのがこの『フレディ・フリーローダー』なのだそうです。
かなやま
①~③曲目は同日、1959年3月2日に録音されていますが、この②のみがウィントン・ケリーがピアノを弾いています。
確かに聴いてみるとタッチがビル・エヴァンスとは全然異なりますが、Kind of Blue=Miles Davis Sextet=マイルス、キャノンボール、コルトレーン、ビル、ポール、ジミーとすっかり記憶されていたのでピアノの奏者の違いにここ数日前まで気づきませんでした・・・。汗
3 Blue in Green を聴く
マイルスとビル・エヴァンスの共作とされるのが一般的だそうですが、クレジットではマイルスの作曲となっています。そういえば僕の持っているCDのライナーノーツにはマイルスとくわえタバコのビルが一台のピアノに並んでなにやら思索、試行しているような写真があります。かっこいい。
ビルの雰囲気がたっぷりする美しい曲だなあと思います。けっこうビルの作曲域が大きい曲じゃないのかな?と勝手に思います。
ビルの優しいイントロからマイルスの直線的なミュート・トランペットが切り込んでいくような・・・。ビルのピアノがグリーンで、マイルスのブルーなトランペットが入っていくと想像していつも聴いてしまいます(個人的見解です・w)。
こうしてアナログ盤でいうとA面の3曲が終わります。
Kind of Blue (A面)はとりあえずここまで・・・次回へ続く&まとめ
やはり超名盤。
かの中山さんですら語れないほどの作品。僕のようなひよっこには、ますますこのアルバムについて書くことは本当に難しい。 前々回のギル・エヴァンスとの共作Porgy and Bess(1958年)も、とてもレビューを書くのはむずかしいと思いましたが、それとはまた異なる難しさがある、と書いてみてわかりました。次回、B面に続く・・・。
お読みいただきまして誠にありがとうございます。
<(_ _)>
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かなやま
この記事の続き『カインド・オブ・ブルー B面』はこちらです。
かなやま
このサイトの主な参考書
かなやま
このサイトでは主に以下の2冊を参考に、筆者かなやまがマイルス・デイヴィスのアルバムをレビューして、好き勝手なことを書いております。
小川隆夫著 『マイルス・デイヴィス大事典』
書籍の帯で『マイルスにもっとも肉薄した男』と紹介されている、世界に誇る日本ジャズ界の評論家、小川隆夫さんによる渾身の一冊。『大事典』の名のとおり、見やすいインデックスのついた全839ページの巨編です。
かなやま
ブートレグについては解説はされていません。
公式盤における収録日や場所、演奏者などの詳細データが見やすく編集されており、
ファン必須の1冊です。
中山康樹著 『マイルスを聴け!Version7』
故中山康樹さんが残した同ジリーズのヴァージョン7。電子書籍にもなく、再販されることもないこのシリーズは、貴重なヴァージョン8は高額で取引されているので、こちらのヴァージョン7あたりがコスパがいいです。
かなやま
ブートレグも聴きたいかたは最終巻のversion8がいいかもしれません。
しかしその後にも増殖し続けるブートレグ・・・。
コメント
水墨画・・ビルエバンスがこのアルバムのライナーノーツに記した内容ですよね?
石川さま コメントいただき誠にありがとうございます。そうですか。。。ビル・エバンスの残した言葉から「水墨画」があったのですね。初めてしりました。その辺を加筆、深堀りしたらおもしろそうです。調べてみたいと思います。今後ともご指導よろしくお願いいたします。
通りすがりでございます。ジャズ界では「カインド・オブ・ブルー」が最高と思います。
これに匹敵するロックアルバムは、ピンクフロイドの「狂気」しかないと信じます。
武田の赤備えさん
コメントありがとうございます。たいへんうれしく思っております。
「カインド・オブ・ブルー」がジャズの最高峰の一つだと私も感じます。またその前後の歴史や作品も「カインド~」を味わい深くさせているなあと感じます。
また当サイトの戯言をご高覧いただきながらジャズを一緒に楽しんでいきましょう。
「ピンクフロイド」は学生時代にちょっと聴いただけです。これからの人生はいろんなものを聴いていきたいと思っております。
今後ともよろしくお願いいたします。