Someday My Prince Will Come 概要
1961年 Columbia
Hank Mobley | ts |
John Coltrane(①⑤) | ts |
Wynton Kelly | p |
Paul Chambers | b |
Jimmy Cobb | ds |
Philly Joe Jones(⑦) | ds |
こちらも名作と言えば名作・・・。
すいません、生意気ですが名作ですけれどね・・・やっぱり帝王らしからぬタイトルにちょいと違和感を感じるのは僕だけではないはず・・・。
コルトレーンがヨーロッパ・ツアーに帯同はしたものの、やっぱり退団しました。
そしてその翌年、このアルバムは録音されました。
コルトレーンは1,5曲目に『ゲスト』として参加しました。
ジョン・コルトレーンとマイルスの仲がよいことを確認してホッとした件・・・Someday My Prince Will Come
あらためて昨夜、『マイルス・デイヴィス自伝』の1960年頃のページをを読み返していました。
なんだかコルトレーンとマイルスはあんなに素晴らしいレコーディングをしてきたのに、コルトレーンがマイルス・バンドを辞めたがって、二人の関係ってけっこう悪くなったのかなあなんて心配にもなりまして・・・いや、亡き二人の心配なんてしたってしかたないのですけどね・・・w
二人は仲良しであってほしいと思いましたw。
自伝を読み返すと、斜め読みしたときと違って今は時系列にアルバムを聴いてきたので頭にすっとマイルスの話が入ってくるようになりました。
前述のマイルスのヨーロッパツアー(1960年春)にコルトレーンが行きたがらず、コルトレーンがウエィン・ショーターを紹介し、ショーターからマイルスに直接電話をさせたというエピソードがありました。
それでマイルスはカチンときました。コルトレーンのほかに深くマイルスの曲を理解している奏者がいなかったからだそうです。
ショーターはこのあとの他の黄金期を担うテナー・サックスの巨匠です。
やっぱりコルトレーンとの仲は悪くなってしまったのか・・・と涙目で僕は自伝を読み進めました(おおげさ・w)。
ショーターとの出会いはこの時期だと認識できたのもおもしろいです。
マイルスはコルトレーンに本当に信頼をおいていたのですね。
次のエピソードがよりそれを感じます。
マイルスがコルトレーンにツアーに帯同する頃、ソプラノ・サックスをプレゼントしました。
コルトレーンはえらくこれを気に入って吹いたそうです。
コルトレーンにソプラノ・サックスという新しい表現を広げたのはマイルスだったのです。
『お前は生きているかぎり、オレに借りがあるんだぞ』とマイルスがからかうと
コルトレーンは涙が出始めるまで大笑い。
『これはマジだぞ』とマイルス・・・。
するとコルトレーンは猛烈な力でマイルスを抱きしめて『マイルス、そのとおりだ』と繰り返したと書かれています。
なんと心温まるエピソード・・・。
しかもコルトレーンは親分を力強く抱きしめるほど・・・親分に遠慮なんてなかったことがわります。
そんなコルトレーンはSomeday My Prince~(1961年)のレコーディングには脱退はしていたもののゲストで参加したわけです。
仲良しでよかったw。
こんなエピソードもマイルスの言葉で読める自伝はお手元におススメです。
楽曲を聴く Someday My Prince Will Come
Someday My Prince Will Comeを聴く
邦題『いつか王子さまが』
ウォルト・ディズニーの「白雪姫」のテーマ曲
まあ、世界的名曲。みんな大好きディズニーですもんね。
いや~なにがいいって、やっぱりこのアレンジ能力ですかね~。マイルスの・・・。
イントロからやさしいポールのウッド・ベースのぶぅん ぶぅん ぶぅん♪・・・
果てしなく ぶぅん ぶぅん ぶぅん♪・・・
ウィントン・ケリーのピアノがディスニーらしくメルヘンチックに入ってきて
ようやくマイルスのミュート・トランペットが登場・・・
優しい音だなあ・・・。
でもなんだかですね、僕はマイルスがこの曲をレコーディングしようと思ったのかどうかな、なんて思ってしまうんですね。
ちょいとメルヘンし過ぎてないかな。
ロマンティック過ぎないかな。
素晴らしい構成のアレンジはさすがマイルスと思うのですけど、そこだけがちょっと聴くたびにひっかかります。
ま、マイルスが取り上げればマイルスの曲になっているのが、やはり帝王たる所以でしょうからいいんですけどね。
テナー・サックスはツイン編成です。
最初がハンク・モブレイ。
後半がコルトレーン。
ここでもやっぱりコルトレーンは彼らしく音数も多く強いブロウしまくり感はありますが、この曲のコンセプトの範囲には収まる感じで、この頃のコルトレーンらしさかなと思います。
Old Folksを聴く
1938年のWillard Robison作曲のジャズ・スタンダード。
すぐ入ってくるマイルスのミュートがいい音だなあ~。たっぷりマイルスの音を聴けます。
Pfrancingを聴く
マイルスの作曲。
Pfrancing とい言葉はマイルスの当時の奥さん、フランシス・テイラーの名前から作った言葉。
CDを買ったばかりの頃、まじめに辞書を引いてみた僕です・・・掲載されてません・w当然
自伝の中でもマイルスはこの曲はもちろん妻に捧げた曲だと言っています。
ジャケットの写真の女性はもちろんフランシスです。
マイルスが自伝の中で『当然、オレはフランシスの王子様だ』と言っていますが、プレイ・ボーイのマイルスは本心だったのかなあと僕なんかは斜めから見てしまいますけどね。
その証拠の数年するとこの曲のタイトルはNo Bluesに変わりますもん。
奥さんの名前の曲をつくるなんてやっぱり欧米人は違うなあ。
僕はこの曲はけっこうタイトル以外はマイルス節が聴けて大好きです。
特徴はなんと言ってもコール&レスポンスのあとのテーマのマイルスのなが~~~~~~~~~~~~い一吹きw。
ここにもマイルスの作曲能力、感性の高さ、言葉にできないものがあります。
初めてこの曲を聴いた数年前のことをよく覚えています。
あまりに長くてのけぞり、にんまりとしてしまいました。
『さすが、帝王・・・』とつぶやきましたw。
これぞジャズ・・・
他の音楽ばかりを聴いてきた僕にある意味、ジャズの面白いパンチをくらわせてくれた曲だと思いますw。
Drad Dogを聴く
こちらもマイルスの作曲
優しいミュートのバラード。
ああ、いいなあ、マイルスは・・・。
こちらは友情ソング。
コロムビアの社長、Goddard Libersonの名前を逆から書いたタイトル。
ギル・エヴァンスとの共作Sketches of Spainで長らくレコーディング完成まで時間をかけてひやひやさせたお礼?おわび?感謝?
Teoを聴く
こちらも友情ソング。マイルス作曲。
またのタイトルをNeoともいう。どちらでもいいらしい。
プロデューサーのテオ・マセロに捧ぐ曲。
テオはネオ(新)でもあったのでしょう。
よく考えればSomedeay My Prince~も三拍子ではあるけれども
こちらがやはりしぶくてかっこいい。
コルトレーンのもう1曲のゲスト参加曲です。
やはりここでもコルトレーンが吹きますねえw。
でもやはりいつもいつもこう最後おわってみれば、マイルスがもっていくのは恒例ですね。
I Thought About You を聴く
こちらもジャズ・スタンダードのバラード。
1939年 Jimmy Van Heusen作曲。
マイルスに酔ってください。ハンク・モブレイのサックスにひたってくださいw。
Blues No.2 を聴く
ここからはオリジナルのアナログ・レコードにはないボーナストラック扱い。
フィリー・ジョーがドラムスにゲスト参加。
ジョニー・マーサーの作曲。
コール&レスポンスに戻って次第に力強いエンディングに着地するあたりかっこいい!!
Someday My Prince Will Come (別テイク)を聴く
指パッチン・カウントで始まる別テイク。
ウイントン・ケリーのピアノが聴き飽きるほど聴いてきたかたには新鮮に感じられるであろう別テイク。
その新鮮さを楽しむにはよいでしょう。
マイルスが1曲目を採用したところを考えればこちらはやはりオマケ感が強いと思います。
全般をとおして・・・マイルス ジャズ 入門 初心者 にはおススメです・・・Someday My Prince Will Come
こうして聴いてみると僕のようなマイルス者(自称ですが)には、このアルバムにうつつを抜かしている場合ではない気もします(何様か?と言われるでしょうけど・・・)が、
これからマイルスを聴く
これからジャズを聴く
このようなかたがたにはおススメできるアルバムだと思います。
Someday My Prince Will Come おススメできる理由は・・・
その理由としましては・・・
〇メジャーな『いつか王子様が』なんて曲をジャズにアレンジされていて聴きやすいし
〇ジャズ・スタンダードも入っているし
〇マイルスのミュート・トランペットがとってもいい音でやさしいし
〇ブルース・ナンバーも入っているし
〇コルトレーンの吹きまくり感を聴けるし(よくもわるくも)
〇僕にとっては3曲目のPfrancingでの長い長いマイルスの一吹きのジャズらしい面白さ、アイデア能力なんかが聴き始めに面白い!!
などなどの理由からおススメします。
とても親しみやすいのではないでしょうか?
そのうちジャズやマイルスにはまっていくと次第に『マイルスのSomeday My Prince Will Come・・・?ああ、あれはいいアルバムだったね、でも最近はさあ・・・』とうんちくを語るようになることでしょうけどね・・・。僕のように・・・。面倒くさい男になってしまいましたw。
今夜も最後までお読みいただきまして、お付き合いいただきまして、ありがとうございました。
かなやま
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