Milestones 概要
1958年 Columbia
Cannonball Adderley | as |
John Coltrane | ts |
Red Garland | p |
Paul Chambers | b |
Philly Joe Jones | ds |
もう僕のブログも1958年のアルバムを書くことになりました・・・。
本当に駆け足で一か月ちょっとで帝王のアルバムをレビューしてきましたが数々の名盤のリリースされた1958年をもう取り上げることになろうとは・・・。
もっともっと先になるかなと思っていましたが、こんなつたない文章でもお読みいただけるかたがいたことが励みになり、記事数を重ねてくることができました。ありがとうございます。
こちら名盤“Milestones”です。
まずアルバムジャケットのアートワークをみましょう Milestones
なんといいましょう・・・このジャケットのマイルス・・・。
イスには座っていますが、なんだかぎこちない恰好で腰かけているというか、楽じゃなさそうというか、なんだか違和感のある体勢の写真だなと思うのは僕だけでしょうか???w
意外と猫背というか、腰に悪そうな腰かけ方だと思います。
そういえばマイルスってとくにこの後のいわゆる、エレクトリック期と呼ばれる頃の姿を見るととてもいかつくて怖そうに見え、ボクシングもやっていたくらいなんで、さぞでかいのだろうと思ってましたが、意外と背の高さは低かったんですよね。
確か身長170cmもなかったとか・・・。
かと言ってご存命のときに会えたとしたら、身長以上の迫力とオーラはもちろんあったでしょう・・・。
大きな目でまっすぐこちらを見つめ、愛用のトランペットを片手にシャツのボタンを外していつでも演奏をし始めそうなこのジャケット写真。帝王、御年32歳のアルバムですか・・・。
まさに『働き盛り』の年齢です。
キャノンボール・アダレイ Milestones
しだいに薬物で問題も出てくるコルトレーンに加えて、asにキャノンボール・アダレイが参加します。
ここでもまた一人、マイルスのまわりには巨匠が現れますね。
いや、正確にはマイルスが巨匠に作り上げていくといったほうがいいかもしれません。
実際、キャノンボール・アダレイは体格も『キャノンボール』というだけあって大きかったそうですよね。それがニックネームの由来です。
一人ホーンセクションが増えてセクステット(6人編成)となりました。
4曲目Milestonesから聴くのが中山さんからのおすすめ!!
しばらくこのアルバムを以前から聴いていましたが、いつものように中山康樹さんの名著『マイルスを聴け!Version7』で中山さんが述べられているのですが、このアルバムはオリジナルは6曲編成になっていますが、4曲目から聴きましょうということです。
なぜか???
4曲目はアルバム・タイトル曲“Milestones”です(題名どおりのマイルスの作曲)。
これはアナログレコードでいうとB面の1曲目ということ。
中山さんはB面からどうやら毎回、うっかりなのかはわかりませんが聴いていたようで、しっくりくるのはB面から・・・とのことです。
そう言われてみると華やかに始まるあの特徴的テーマの『マイルストーンズ』を1曲目にしておいたほうがしっくりきますね。
本当の1曲目である“Dr.Jackle”がかすむくらい刺激的なMilestones。
そして僕のような80年代バンド世代を生きてきた8ビート一辺倒の男には、この“Milestones”の不思議なメインメロディのズレがなんとも奇妙かつ、刺激的です。
にもかかわらずきっちりとした一体感、バンド感・・・。この辺もジャズにのめりこむきっかけを僕に与えたところだと思います。
そして5曲目、“Billy Boy”アメリカ童謡が元ネタの曲だそうですが、こちらはマイルスやその他ホーンセクションが参加しておらず、ガーランドの中心のトリオ編成の演奏となっています。
ななんと、ガーランドはこのレコーディングに遅刻したんだそうです。
それで2曲目“Sid’s Ahead”のピアノをマイルスが弾いているという事態に・・・
(ちなみにSidはマイルスの友達のDJの名前=当時のライナーノーツより)。
それとバランスをとってガーランドの見せ場的なものを作ってあげようとマイルスが配慮したというのが大方の見方です。
でもマイルスのピアノが聴けるというのもなかなかよい機会ですね、マイルス者たちにとっては・・・。
アーマッド・ジャマルへの尊敬の念が強かったマイルスがガーランドにアーマッドに似せて弾いてほしいとリクエストしていたというエピソードもあります。
トランペットを傍らに置き、ピアノを弾くマイルスの姿をアルバムジャケットの写真から想像すると、さぞかっこよかっただろうなと思います。
オリジナルでは最後の曲となるこれも名曲“Straight,No Chaser”。
サックスの二人の異なるアプローチが大いに盛り上げる、セロニアス・モンクの曲です。
モードジャズの始まり Milestonesはまさにマイルストーン!?
一般的にはビバップとかハードバップと呼ばれるこの時代のジャズシーンにおいて、マイルスは異なる新しい領域を模索し見つけて取り入れ始めた時期なのです。
いわゆる、音階をもとに作り上げていく『モード・ジャズ』の創生です。
そんな小難しいことは言ってくれるな、と自分でも自分に言いたくなります。
そんな音楽理論に詳しいわけではない僕なので、そんな時代だったんだなくらいにしか頭には入っていません。
でもやはり、膨大なマイルスの音楽を少しずつ時代やカテゴリーで区切ることで、聴き手が迷子にならないようにする指標としてこの『モード・ジャズ』って言葉を覚えておく価値は十分あると思います。
モード・ジャズってどんなんだっけ?とふと迷子になりかけたら “Milestones”がモードジャズの先駆けだ!って思い出せるようにしておくと便利だと思います。
まさにマイルストーン(指標とか座標とか節目の意味)
ますますおもしろくなっていくマイルスのアルバムを時系列で辿るこのブログ・・・。
今後もご期待ください!
かなやま
コメント
数年前にmilestoneのアルバムを聴いて以来、ジャズにハマってしまいました。
milestoneのみを繰り返しきいてみると、イントロと比べてアウトロのテンポが明らかに遅くなっていることが分かります。
これってなんでなのかなぁ…と調べてみてもよく分からず、もしなにかご存知でしたらお教え頂けないでしょうか。
sum様。コメントありがとうございます。
モダン・ジャズの醍醐味ってことなのでしょうか・・・。
結論は私もわかりませんです。申し訳ないです。
でも、やっぱりシンコペーションの魅力を取り入れてみた・・・モダン・ジャズのおもしろみから
テンポが次第にゆっくりになったんじゃないかなと私は解釈しています。
中山康樹さんは『マイルスを聴け!Version7』においてMilestonesの楽曲とアルバム全般について
『(モードとかコード進行とか)すべて無視してよい。
(中略)痛快なモダン・ジャズとして聴き、大きな心で楽しめばよい』と書いておられます。
また小川隆夫さんも『マイルス・デイヴィス大事典』において
『シンプルなリズム・セクションが反復する中で、ソロイストが自在なプレイを展開する。
ドラムスはリム・ショットの位置を微妙にずらしながら
テンポを緩めたり、速めたりと、変化をつける』と解説。
西洋クラシックから一段とはるかに離れた
現代的な新しい音楽に変化した・・・
そんな楽曲なのかもしれません。
ドラムスのフィリー・ジョーも
そんなにテンポが遅くなっていることは気づかずに
リム・ショットを計算していれてみたら
かなりエモーショナルな演奏に仕上がった・・・
と偶発的なジャズの魅力を私は感じつつ
名演だなあ・・・としみじみ思いなおしました
(あくまで仮説ですが)。
また久しぶりに繰り返して聴いて楽しませていただきました。
sum様、また何か情報あれば更新します。
ありがとうございました。