Big Fun 概要
1969年~1972年 Colombia
小川隆夫さん著『マイルス・デイヴィス大事典』によると、本作は1969年~1972年に録音され『未発表演奏集というより、アルバムに収録するマテリアルが揃ったから発表した』というアルバムだそうです。
中山康樹さん著『マイルスを聴け!version7』によりますと『1974年、いっこうに新作を発表する気配のないマイルスに業を煮やしたCBS(コロムビア・レコードのこと)が、あたかも新作ふうのジャケットを装って出したオムニバス盤』とあります。
録音した時期とリリース時期がかなり異なります。
中山さんは『ワンランク落ちる』『全4曲いずれも未完成、リハーサルの域を出るものではない』と同書の中で本作をおっしゃっていますが、さてどうでしょう?そんなところをお話ししていければなあと思います。
『マイルス・デイヴィス自伝』の中では、マイルスは、本作『ビッグ・ファン』と『オン・ザ・コーナー』(1972年)は『もっと若い黒人達に聴かれるものにしようと、努力した』とも語っています。
そんな捨てたもんじゃないアルバムと期待して聴いてみましょう。
二枚組で全曲非常に長い録音となっていますが、正直、僕はこのアルバムを何回聴いていたかな?という感じ。
ブログにするためにここ数日聴きこんで感じたことを書いていこうと思っています。
Big Fun シタールの登場
マイルスのアルバムの録音した時期を考えると、本作で初めての『エレクトリック・シタール』が登場します。
シタール・・・。あれですよね・・・?インドの・・・。聴いた感じ弦楽器でギターのインド版???ビートルズの『ノルウェーの森』で使われているアレですよね・・・
程度しか知らないので下記リンクを参考にさせてもらいました。
ほーう、やっぱり音を聴いたとおりの金属弦楽器ですね。
けっこう大きな楽器ですね。音もさぞ、でかい音がでるんでしょう。
弦もなかなかのお値段ですね。むむ!!このCDは!?
ついでに『タンブーラ』と呼ばれる同じくインド楽器も使われている本作。こちらはシタールとことなりギターのようなフレットがなく、開放弦を一定に鳴らす伴奏楽器のようです。歌ってらっしゃる動画も見ましたが、なかなかふくよかでいい音ですね。
Big Fun 楽曲を聴く
Great Expectations を聴く・・・
マイルスとジョー・ザヴィヌルの作曲。1969年の『ビッチズ・ブリュー』の3か月後の録音です。
ソプラノ・サックスにスティーブ・グロスマンが参加。わずか19歳でのマイルス・バンドへの大抜擢です。
ベースはまだロン・カーターです。ポリリズムとシタールが酩酊状態に陥らせるような・・・。トランペットとサックスもとびかってますね。
後半はウェザー・リポートの『オレンジ・レディ』。ビヨンビヨンとインド楽器が聴こえるヴァージョンとしてザヴィヌル・ファンにはおもしろい曲に仕上がっています(仕上がっていないと中山さんは言いますが・・・)。
この時点でマイルスとザヴィヌルは実験的にこの曲を録音をしていたんですね。
Ife を聴く・・・【追記あり】
マイルスの作曲。『イーフェ』と読みます。タイトルの由来は???ご存知のかた、ご指導お願いいたします・・・。<(_ _)>
『オン・ザ・コーナー』(1972年)でも聴かれる怪しい鈴の音wからもわかるように同時期に録音されたもの(1972年6月)が1974年にリリースされたアルバムに入っているという、このアルバムのごちゃごちゃ感wは僕のブログがもっとも苦手とするタイプのアルバムですw。
しつこく繰り返すベース・ラインとポリリズム・・・。どこかでけっこう聴いたような曲だよなあとかなりここ数日聴いていたこの曲。
『マイルス・デイヴィス・イン・コンサート』(1972年)というライブアルバムで演奏されている曲なんです。何回も聴いていた、あの曲だと気づくまで、かなり時間がかかりました!あっちはスネア・ドラムの張りにシビれるんですよね。
【追記1】タイトル名の由来について・・・
いつも頼りになる僕のTwitterフォロワーのおひとりからIfeはJames Mtumeの娘に因んだタイトルのようだとの情報をいただきました。
こうして考えると、ジャズでは人名をそのままタイトルにする・・・ということが多いですね・・・。ショーターはいとこの名前からってのが多くて、親戚関係が良好なのかwって笑えましたが。
それほどタイトルに意味を持たせないのがジャズではクールなのでしょうと勝手に推測します。お寄せたいただいたフォロワーさま、たいへんありがとうございます!!
【追記2】Ifeの演奏されている他のアルバムについて・・・
さて、この曲について、『マイルス・デイヴィス・イン・コンサート』(1972年)に収録されていると記述しましたが、こちらも別のTwitterのフォロワーさまから情報をいただき、その他のアルバムでもかなり演奏されている{例:Dark Magus(1974年) AGHARTA ,PANGAEA(1975年)、その後の長期休養期間明けのライブでも多数}とのことです。
1曲が60分の長時間でライブのその1セットが1タイトルでまったく異なるタイトルでクレジットされていることもよくあります。
各アルバムにIfeとは表記されていないので、何度も聴いていてもこの曲が入っていることに気づかなかった僕です。
ですのでそのようなかたが他にも多いと思いますので、ますますこのブログではそのへんのことも解説していかねばならないと気づきました。
僕はアガルタなんてけっこう聴いてますけどね・・・それでも気づかないのは、耳の悪さが露呈してしまってますが、これを機に皆さまの聴き方ガイド、お役に立てるようにますますがんばりたいと思います。
教えてくださったフォロワーさま、ありがとうございます!!
なるほど、数々のライブ盤のプロトタイプがこのアルバムに入っていたというわけですか・・・。
『イン・コンサート』が完成形だとすると、『ビッグ・ファン』でのスタジオ版では、手探りでいろいろ試している感じがするかな???
『イン・コンサート』では突き抜けた演奏が聴けると思います。
中山さんのいう『リハーサルの域を出るものではない』の解説を裏付ける聴き比べをしてみてください。
Go Ahead John を聴く・・・
時は1970年にまた遡ります。『ビッチズ・ブリュー』から半年以上経過した時期の録音でディストーションの効いたエレキ・ギターとマイルスのワウ・ペダルを駆使したブロウの聴ける1曲。
ジョン・マクラフリンをフューチャーしたこの曲はマイルスが作曲でタイトルにはジョンの名前も冠しているあたり、二人の関係が良好なのが想像できます。
ソプラノ・サックスもショーターではなくスティーブ・グロスマンがここでも登場。この翌日に後の名作『ジャック・ジョンソン』が録音されることになります。
・・・と聞くとつながりを感じますよね。これだけいろいろ聴こえてくるようですがクインテット編成です。
『ビッチズ・ブリュー』と比較すると大きな変化したサウンドです。
だいたい3つのセクションにわかれるこの曲。テオ・マセロのいたずらか?それともマイルスの強い指示なのか?ギターのソロの箇所ではやけにステレオを効かせた編集になっていて、これをよしとしたのはマイルスなのでしょう。
そこまでしなくても・・・というくらい左右に音を振りますが、ヘッドフォンで聴くと効果は絶大(過ぎる?)。後半聴かせるマイルスとスティーブのかけあいのブルース・スタイルもいいです。
Lonely Fire を聴く・・・
前曲とだいたい同時期の1970年録音。
デイヴ・ホランドがウッドからエレクトリック・ベースに持ち替えたのはここからと『マイルス・デイヴィス大事典』(小川隆夫さん著)に書かれています。むむー、全然わからんかったですw。
マイルス作曲。シタールとトランペットとサックスってけっこう相性いいなあ・・・とトランス状態で聴ける1曲です。
ソプラノ・サックスもマイルスの音と同様、抒情的で好きです。19分32秒あたりでチック・コリアが『ラ・フィエスタ』を弾いていると中山さんが『マイルスを聴け!』で言っています。ご確認ください。
Big Fun 全般をとおして・・・
中山さんはこのアルバムに対して辛口です。『マイルスを聴け!Version7』の本作レビューを『そこまで無理して聴くこともない』と結んでおられます。
たしかにそうなのかもしれませんけれど、けっこう好きで聴いていた『マイルス・デイヴィス・イン・コンサート』の『イーフェ』がここに原型があったのは僕にとってはけっこうな発見で嬉しくなりました。
ごちゃごちゃな4曲の録音時期に加えて、僕の持っているCDよりあとに出たものでは『+4』曲されているようなので、よけい混乱するのが嫌であえてここでは追及しないでおこうかと思います。
1曲1曲も長く、さらになにか発見を・・・と思ってしばらく聴き続けたらなんだかんだ1万字を超えております・・・w。
シタールや鈴の音が採用されているところだけでも考えれば、時系列に聴いてくるとこれはこれで、おもしろいアルバムだと思います。
マイルスに聴かなくていいアルバムはない!!でもブートも含めたらお金がもたん!!といつもの結論に至りますが、本作のように存在したことも忘れかけていたアルバムをしっかり聴きなおすことも楽しいですね。
今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
<(_ _)>
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