【マイルス・デイヴィス】1969Miles ロスト・クインテット レビュー 考察50 

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1969Miles 概要

Wayne Shorter/ss,ts Chick Corea/elp Dave Holland/elb,b Jack DeJohnette/ds

1969年(7月) Sony

フランスアンティーブ・ジャズ・フェスティヴァルでのラジオ放送された模様を録音して後にリリースされたライブ・アルバムです。

リゾート地でのライブにしては、なんと殺気立ったライブでしょうかw。

詳しくは後で『楽曲を聴く』の欄で書きますが、この1ヵ月後に録音される『ビッチズ・ブリュー』(1969年)の中にスタジオ録音される『マイルス・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン』『サンクチュアリ』が先行されて披露されています。

また往年の『マイルストーンズ』『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』もあるし、『マイルス・スマイルズ』(1966年)から『フットプリンツ』が演奏されているし、『ディレクションズ』の最も古く録音されたプロトタイプが聴けるし、5ヵ月前の録音の『イン・ア・サイレント・ウェイ』(1969年)から『イッツ・アバウト・ザットタイム』と、タイトルだけでもこれは興味をそそります。

録音時期とリリース時期について・・・

ときは1969年7月

なんとあの世紀の問題作「ビッチズ・ブリュー」(1969年)の録音される1ヵ月前のライブです。

CDの帯には「『ビッチェズ・ブリュー』録音前夜」と書かれています。

しかし、本作が世の中にリリースされたのは、マイルスが逝去した2年後の1993年10月

前述のとおりビッチズ・ブリュー前夜というキャッチ・フレーズ、未発表音源としてマイルス・ファンは熱狂した作品です。

いわゆる、ロスト・クインテットと呼ばれる件

アコースティックからエレクトリックへの転換をするマイルスのこの時期のクインテットをロスト・クインテットと呼びます。実際には何も失ってはいない、素晴らしいクインテットですけどw。

なにが 『ロスト』なのかというと、ブートレグは別として、公式盤のレコーディングがありませんでした。

マイルスとショーター、チック、デイヴ、ジャックという巨匠のクインテットにもかかわらず、レコーディングされてなかったのです。

それゆえに、『失われたクインテット』なのです。

ライブはMCなし、インターヴァルなし。メドレーで演奏される件

この頃からのマイルスのライブはそれまで同様、MCは基本ありません。

さらにこの頃からは、曲間のインターヴァルもなくメドレーで、一気通貫、ドバ~ッと演奏されるようになります。

帝王に言葉も余白も不要。ドバ~ッ!!です。(ドバ~ッ!!は、中山康樹さんの言葉を引用した、マイルス用語ですw。)

ジャケットを眺める・・・

ジャケットを見ると、マイルスが大きなサングラスを着けていてかっこいいですね。

マイルスはサングラスをかけるとこのような眉毛を覆うほどの、大きなサングラスをかけるようになります。

サングラス・ファッションの点からいうと、大きなサングラスは小顔効果があるのが第一。

目と眉毛が離れていればいるほど、ちょっと気が抜けたというか、ピースフルな顔立ちになりますが、目と眉毛の間が狭いほうがキリっとしまった印象をあたえます。

そこで第二に眉毛まで覆うことでクールな絞まりのある印象を与えます。

マイルスにはとてもお似合いのサングラスではないでしょうか?

逆に僕もそうですが、目と眉毛が離れている傾向にある日本人にも、小さいものより、このようなサングラスのほうがよいと一般的にはされます。ご参考まで・・・。

このジャケット・アート。佐藤孝信さんのデザインだそうです。

佐藤さんはマイルスの晩年、マイルスのファッションを支えた人物であり、ソニーの力のいれようもわかる、こだわりのアート・ワークとなっています。

電化も伝わってくる、かっこいいデザインです。

楽曲を聴く

Directions を聴く・・・

ジョー・ザヴィヌルの作曲。

1981年のマイルスの長期休養期間にリリースされた未発表音源集『ディレクションズ』ではスタジオ録音されています。

ライブでは1曲目に演奏されることが多いこの曲は、エレクトリック・マイルスの象徴的曲のうちの一つなのは間違いないでしょう。

このライブが行われた段階では、まったくの未発表でしたので、当時のこの会場で聴いた観客はどう感じたのでしょうか?

前作、「イン・ア・サイレント・ウェイ」(1969年)からは想像もできない、この狂暴ともいえるロックに、観客はきっと度肝を抜かれたでしょう。破裂するマイルスのハイ・ノート・・・。

Miles Runs the Voodoo Down を聴く・・・

前曲の流れのままメドレーでこの曲へ。マイルス作曲。

むむ???この曲はジミヘンですか?と思ったのが、僕の第一印象。ジミヘンじゃあないですか!?

タイトルを見ると・・・おお、「ビッチズ・ブリュー」のDISC2に入ってる曲ではないですか!?

こんなかっこいい、シビれる曲だったっけ?とスタジオ録音も聴きなおしましたw。まさに「ウッドストック」でのライブのような熱気です。

でも、マイルスのトランペットが吠えますし、そな中でもちょっとクールなショーターのテナーもいいです。まさにロック。ドラムスとベースも太い太いw。

これがマイルスのやりたかった、たくさんの人にオレの音楽を聴かせたい!という願望の現れかなと思っています。

Milestones を聴く・・・

往年のこの曲は1958年の同タイトルのアルバムからのマイルス作曲。懐かしくも感じてしまいますが、スタイルは全く新しくなりました。

ウォーキングするベースは名残りがあるものの、ここまでぶっとんでしまうともう、だれもマイルスを止めませんね。エレピが新鮮です。どっかんどっかんと太鼓もいいです。

いろんなところでちょっとこのイントロが始まったところは気が抜けるとか、拍子抜けなんて言われてますが、こうして時系列に聴いてきた僕には、ニンマリしてしまう大好きなヴァージョンです。

僕の知る限り、マイルスのまさに『マイルストーン(指標の意味であるこの曲はこれが最後の録音となっていると思います。

アコースティック期とエレクトリック期との区別の指標とも言えると勝手に解釈しています。

Footprints を聴く・・・

1966年『マイルス・スマイルズ』より、ショーター作曲。

そのままメドレーでつながってきますテーマ。怪しげな雰囲気は往年のまま、マイルスの激しいブロウを堪能できます。

あの二期黄金クインテットの代表曲を所謂『ロスト・クインテット』が演奏するというのは、たいへん興味深いです。

‘Round About Midnight を聴く・・・

これも往年の名曲、説明不要ですね。あのブリッジと呼ばれる箇所もかっこいい。決まってます!!

これもおそらく、マイルスの最後の 『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』と思われます。

マイルスのソロがひとり、響くところに、エレピがそっとよりそい、あのどっか~んが割れんばかりに迎えられ、ショーターのソロくーったまらんです。ここはウッド・ベースで往年の雰囲気を楽しめます。

これぞマイルスが編み出した着地点の『ラウンド・アバウト・ミッドナイ~』です。

この曲は、マイルスのトランペットもいいのですが、そのあと長いソロをとるのはテナー・サックスなんですよね。

あえてその時々のテナー奏者に花を持たせる構成は名曲中の名曲だなあと思います。

It’s About That Time を聴く・・・

5ヵ月前にリリースされた『イン・ア・サイレント・ウェイ』からマイルスの作曲。

スタジオ録音では『イン・ア・サイレント・ウェイ』からメドレーでこの曲にいき、また『イン・ア・サイレント・ウェイ』に戻るというテオ・マセロの編集テクニックも駆使されていましたが、このライブでは独立して演奏されています。

この曲もジミ・ヘンドリックスの影響をもろに受けていると感じます。ショーターのソプラノ・サックスが空を切る・・・。かっくいい!!

Sanctuary を聴く・・・

このライブの1ヵ月後に『ビッチズ・ブリュー』でスタジオ録音されるマイルスの作曲です・・・と言い切りたかったのですが、読者のかたからこれはショーターの作曲では?とご指摘いただきました。

小川隆夫さんの『マイルス・デイヴィス大事典』の540Pによると、この楽曲には3種類の作曲者のクレジットがあるそうです。初演時はマイルス『ビッチズ・ブリュー』ではマイルスとショーター、その後発売の未発表曲集やボックスではショーターの単独・・・。

私の持っているCDではマイルス&ショーターの作曲になっています。

こんな疑問にも答えてくれる小川さんの大事典は、やっぱりインターネットで調べるのと異なる、手にズッシリくる『事典』らしさが実に楽しいです♪。

観客は脳みそぶち抜かれたことでしょうw。ながいマイルスのブロウと余白に昇天・・・。

そのまま『テーマ』にメドレーされ、一気通貫のライブは『終焉を迎える』という言葉がふさわしい、こっちの体力や気力も整ってないといけない、そんなライブが終わります。

全般をとおして・・・高野雲さんのYouTubeもお借りして・・・

まず中山康樹さん著『マイルスを聴け!version7』で本作の解説に冒頭、

『チック・コリアのフェンダー・ローズが肛門周辺を刺激する、ムズムズ。そこへジャック・ディジョネットのはイチかバチかの形相と勢いでドラムスを叩きに叩く。

なにもそこまでというサディスティックな攻撃・・・』(278ページ)

中山さんの解説では五臓六腑をとおり越して、肛門までイッてしまってますw。

音楽に暴力など存在しませんが、狂暴な音楽というのはかつての『プラグド・ニッケル』でも存在します。

しかもそれは、ヘヴィ・メタルでもハード・ロックでもグランジでもパンクでもなく『マイルス・デイヴィス』という音楽でもあるのです。

僕はふと、マイルスの自作のアルバム・リストを眺めていたのですが、レーベルが『ソニー』と書かれた本アルバムを持っていないことに気づきました。

コロムビアでないからブートレグと同じ扱いで買わなくていいやなんて思ってたのです(経済的理由からブートには手を出さないというマイルールをいまだ辛うじて守り続けるためw)。

いろんなレビューをみてもビッチズ・ブリュー前夜とか書かれているのでYouTubeで無料で聴けるにもかかわらず、ネットで注文しました。つい先日のことです。

ソニーから出ているわけですからブートではありませんしねw。

その注文後、我が家に到着前に、偶然にも高野雲さんがYouTubeでちょうどこのライブ・アルバムをYouTubeで語っておられる動画がアップされました。

プロのジャズ評論家が書く、本作のレビューもぜひ、お楽しみください。この動画を拝聴して、なんだかすごいライブ盤を僕は聴き逃していたんだと思いました。

やっぱり高野さんみたいに各楽器の演奏の特徴をとらえて、アルバム全般にも言葉を選んで言及できるようになりたいと思いました。

そして高野さんはそれをサラっと披露されていますが、かなり聴きこんで準備もなされているのでしょう。

当然ですがベースをやっておられるという演奏家としての見解や、よい耳をお持ちでいられるなど、他にもきっとたくさんの違いが僕とはあると思います。

皆さまも、高野さんのYouTubeをチェックしてみてください。とても親しみやすく、でも勉強にもなり、いろんなジャズを聴きたくなると思います。

前回の『イン・ア・サイレント・ウェイ』の聴きなおしもそこそこに、かなり夢中になってここ数日、1969Milesを聴いていました。

こうして聴いてみると新旧織り交ぜてのライブにやっぱり、旧曲がこの先演奏されなくなる寂しさを感じます。

ここから『ビッチズ・ブリュー』へつながる、未来のマイルスを感じる期待もあります。

新バージョンの旧曲へのアプローチも大いに楽しめます。

これはCDで手元に置いてよかったと今は大満足しいています。

そして中山康樹さんの『マイルスを聴け!Version7』によると『1969Miles:Second Nightという本作の翌日のライブを収めたアルバムもSo Whatレーベルから出ているらしいです!!

そちらも『ビッチズ・ブリューで収録されているスパニッシュ・キー』や、『ネフェルティティ』などが入っていて、中山さん『こちらのほうがはるかに上』とおしゃっています!!

こ、こ、これは・・・とうとうブートにも手を出す理由ができてしまいました!w

このへんのライブをコンプリートしたものは以下のものがあるようです。

時系列でマイルスを聴きなおし、レビューを一枚一枚書いていくことで、当時のリアル・タイムでマイルスを追いかけていたファンになっている錯覚に陥ります。

もう『ビッチズ・ブリュー』は何十回聴いたかわかりませんが、また次回のブログのために聴きなおすのが、たいへん楽しみになっています。

やっぱり、時系列で聴きなおすのはいい!!

そしてマイルスは『考古学』と呼ぶにふさわしい歴史上の人物であり、カルチャーだと思います。

では、次回『ビッチズ・ブリュー』の回で、よろしければまたお付き合いをお願いします。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

<(_ _)>

 

 

コメント

  1. arizoona より:

    サンクチュアリはウェインショーターの曲ではないでしょうか?

    • kanayama@jazz より:

      arizoonaさま。ご指摘ありがとうございます。小川隆夫さんの『マイルス・デイヴィス大事典』の540Pによると、この楽曲には3種類の作曲者のクレジットがあるそうです。初演時はマイルス、『ビッチズ・ブリュー』ではマイルスとショーター、その後発売の未発表曲集やボックスではショーターの単独・・・。私の持っているCDではマイルス&ショーターになっています。もう少し含みを持たせてこれから訂正させていただこうと思います。ご高覧いただきまして誠にありがとうございます。

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