1956年 Prestige
John Coltrane | ts |
Red Garland | p |
Paul Chambers | b |
Philly Joe Jones | ds |
『マラソンセッション』『ing四部作』という言葉について・・・Workin’
もう、と言うかいよいよというか、いわゆる『マラソン・セッション』と呼ばれるアルバム4作品を聴いていくことになります。
ランダムに聴いていくより時系列に聴いていくほうがやはり理解が深まっていくと感じています。マイルスをこれから聴くというかたにはとてもいい4部作になると思います。
まずなんでマラソン・セッションというかというと、以前に記事に書いた“Round about Midnight”(1955年)からマイルスは大手レコード会社Columbiaへ移籍します。しかし契約上、それまで在籍していたPrestigeレーベルにまだアルバム制作の契約が残っていました。
そこで一気に録音を完成させてしまった複数枚のアルバムをタイトルに“ing”のつく言葉をつけてリリースしました。マラソンセッションは『ing4部作』とも呼ばれたりします。
僕もマイルスを聴き始めた最初のほうにこのアルバムとその他3枚を買いそろえた覚えがあります。とてもすばらしいアルバムたちです。
そのing4部作とは・・・
とリリースになります。今回聴いていいくのはこの1作目となります。
Columbia Blue NoteとPrestigeのそれぞれの特徴について・・・Workin’
ちなみにおおかたの見方としてColumbiaやBlue Noteと違い、Prestigeってのはいろいろ『いい加減』ととらえられることがよくあります。
緻密さからは離れるのだけどそれがまたいい意味で『いい加減』になることもありますw。
それはこの4部作、いっきに録音して、ところどころにマイルスたちの会話も聴こえてきたり、リラックスした雰囲気が感じられたりとプラス要素になったこともたくさんあると思われます。そんな内容をお話させていただきます。
アルバムジャケットのアートワークについて・・・働くおじさん!?Workin’
しかし、本当に『いい加減』過ぎないか?ってところがまずジャケットの写真。どこのおじさんかと思ったら帝王ではありませんか!?ネクタイをしめているとはいえモノクロの写真が手伝って工事現場のおじさんにも見えますw。マイルスの顔もなぜか影がかっていますし・・・。
そしてマイルスの後ろに見える道路を整地する重機でしょうか?ロードローラーみたいなんが見えますw。なんでこれを背景にしなくてはならなかったのでしょうか?w
そして僕には謎なのがingのつく言葉で4部作を命名するのはいいのですが、なにゆえ“Workin'”なのでしょうか?やっぱりこの写真からそんなタイトルにしたのでしょうか?
名付けた人は誰か?そのいきさつは僕が調べた中では見つかっていません。どなたかご存じでしたら教えてください。
Workin’というタイトルについての疑問と僕の勝手な解釈・・・楽曲について
ただ数回、ここ最近このWorkin’を聴きなおして思ったのですが、②曲目の超名曲“Four”のイントロの激しいフィリー・ジョーのスネアドラムや,わりとアルバム全般的に聴かれるスネアドラムの熱い音がどこかしら“Wokin'”な感じがしてきました。
もしかしてフィリー・ジョーのスネアがこのアルバムの根幹なのでは?と仮説を立てて聴いてみたりもしました。
初めて聴いたときはやはりこのタイトルと異なって1曲目の“It Never Entered My Mind”の美しいガーランドのピアノが聴こえてきて、そこに乗っかってくるマイルスのミュートトランペット・・・。この1曲だけでもマイルスって素晴らしいと思ったものです。
聴きなおすうちに“Worin'”のタイトルの所以はないのだろうかとこじつけようとしますが、①曲目があまりに裏腹すぎますw。とにかく美しい、美しすぎる・・・。
②曲目前述の“Four”。マイルスがまだドラッグの渦中にいたときの“Blue Haze”(1954年)の中でも録音されているマイルスのオリジナルです。
今回は黄金クインテットでの演奏で録音もいいし、これからマイルスの様々なライブアルバムにも録音されるジャズスタンダードにのぼりつめた名曲です。この演奏もいいですが、スピードアップされた疾走感あるバージョンも後々のライブアルバムでぜひ聴いてみてください。
③曲目もDave Brubeck(p)作曲の名曲。本来はこんなに甘いバラードではないのですが、マイルスのミュート・トランペットの音色といい、コルトレーンの入り方といい、もうマイルス・クインテットの曲にまで昇華されています。
レコードでいうA面の終わりの④曲目“The Theme”はWorkin'”にふさわしいドラムワークだなと僕は思います。ひとつのまとまりができる、区切られる、中間の休憩タイムが入る、展開する・・・そんな構成を感じます。
⑤曲目“Trane’s Blues”で華やかに後半戦が始まります。タイトルどおりコルトレーンの曲。冒頭、帝王のダミ声で『ブルーズ・・・♪』。エンディングに近づくとテーマに戻る前にちょっと聴きなれたような一節がコルトレーンとユニゾンで繰り広げられてから本テーマに戻って着地する。これはチャーリー・パーカー親分の”The Hymn”(聖典とかの意味)という曲の一節。
⑥曲目は“Ahamad’s Blues”。マイルスがこの頃敬っていたAhmad Jamal(p)の曲でこれにはマイルス自身の音は全く入っていない、ガーランドとチェンバース、フィリー・ジョーのリズム隊のトリオ演奏です。ぼやーっと聴いているとガーランドのピアノに聴き惚れてしまい、フォーンが入ってないことをうっかり忘れてしまいそうになる。チェンバースの弓ワークがまた曲に広がりを与えるし、フィリー・ジョーのドラム・ワークがまたワーキンを感じさせる。
⑦曲目“Half Nelson”はこのブログではお話していないチャーリー・パーカー親分との演奏など1940年代後半以降に録音がいくつか残されているマイルスオリジナル。『ハーフ・ネルソン』はレスリングの首絞め技の名前なんだと今回調べてわかりました。へえ~~~ってしか・・・w。これだけ他の曲とは別に数か月後に録音。
⑧曲目は“The Theme”のテイク2でアルバム全体の『おあとがよろしいようで~♪』って・・・。
ing四部作から聴き始めることについて・・・
本当に親しみやすい、ing4部作から聴き始めるのはとてもいいです。いい入り方です。
この4枚を紹介したら、もう一回マイルスの自伝を読み返してマラソン・セッションについてどんなことを語ったか、確かめてみようかなと思います。また気づきがあり、そして聴こえ方も変わってくるんじゃないかなあ。なんど聴いても、読んでも、楽しめるのがジャズでありマイルスであると思います。
勝手にですけどそう思います。
かなやま
お読みいただければ嬉しいです!!
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