Water Babies 概要
1967~1968年 Columbia
Wayne Shorter | ts |
Herbie Hancock | p,elp |
Ron Carter | b |
Tony Williams | ds |
Dave Holland(④~⑥) | elb |
Chick Corea(④~⑥) | elp |
いよいよ、電子楽器が登場します。エレクトリック・ピアノ,エレクトリック・ベースです。
と言っても本作、録音されたのが1967~1968年ではありますが、実際、リリースされたのは1976年。
マイルスが長期無期限休養に入ってから1年後にこのアルバムは、マイルスの許諾もなしに(と言っても契約上は問題なし)リリースされました。
ですので、実質のエレクトリック楽器が採用されたのは(つまりエレクトリック・マイルスとか、エレクトリック期とか、カテゴライズするなら)、次回に記事にする予定のMiles in the Skyからとするのが一般的です。
基本、オクラ入りした楽曲を集めた盤と言ってよいと思います。
でもオクラ入りするような低レベルの楽曲ばかりだった・・・というのは大間違いです。
1曲目~3曲目はNefertitiの録音と同日に収録されたものです。
「もう一つのNefertiti」と僕は勝手に考えて、大切な楽曲だと捉えています。
では4~6曲目はなにか?というと、次々作の「キリマンジャロの娘」とそのまた次のIn a Silent Wayの録音の日の間に収録されたもので、昨年(2021年)に亡くなったチック・コリアが入ったりと、メンバー変遷の過渡期にあたります。
またまたレジェンドの参加です。「イモヅルの法則」(中山談)です。
中山康樹さんは「マイルスを聴け!Version7」の中で、「本作は習作の集大成。新発見は4曲目Two Facedのマイルスのソロのみ」と結論づけられておられます。いや~、1~3曲目もそれ以外もいいですけどね。
アルバム・タイトルとジャケット・アートを眺めてみた件 Water Babies
アルバム・タイトルWater Babies について・・・
念のため調べてみました。
上記、19世紀の児童文学に由来されて、このタイトルがつけられたかどうかは、マイルスの許諾なしでリリースされたアルバムのタイトルですので、そう深追いはしないでおくことにします。
ただ、ご存じのとおり、ショーターの作曲した本作1曲目の同タイトル曲からではあります。
コロムビアとしても「これはオクラ入りさせてはもったいない!売れるぞ~!マイルスはいつ復帰するか、いや、もしかしてこのまま引退かもしれん。このタイトルでいこう!!」という感じでしょうか?
ジャケット・アートについて・・・
これはタイトル決めてから描かれたのでしょう・・・。
Corky McCoyというかたのイラストであるとCDにはクレジットされてます。
なんと今後の名盤、On the Corner、Miles Davis in Concert(各1972年)などでのイラストも描いた人で、マイルスと同居するほど親しい間柄だったそうです。
しかしどうなんでしょう?
消火栓から水が噴き出すところで水遊びをする黒人の子どもたち・・・。
ベイビーでは決してありませんしですね・・・w。
パンツを履いていない子どもが3人、ゆるゆるの大人からのお下がりであろう白ブリーフを履く子どもが一人、それをおもしろくなさそうに眺める、きれいな靴に蝶ネクタイとジャケット姿のもう一人・・・。
決してお金持ちの子どもが、必ずしも楽しく友達と遊べているわけではない・・・という表現でしょうか・・・?
よくよく見てみると、真ん中の子どもは♪を拾っていますね。
なぜ、背景が真っ暗なのかなぁと・・・。
まあ、これもマイルスの監修なしでのアートでしょうから・・・これ以上はやめておきます。w
楽曲を聴く Water Babies
Water Babies を聴く・・・
1曲目を飾るショーターの作曲。
妖艶にはじまるメロディはショーターが先発で、呼応するようにマイルスもテーマを吹きます。
そこからはマイルスのいつものミュート・プレイに耳を傾けましょう。
Nefertitiに入ってても違和感はなかったような曲だと思いますが、あまりにもNefertitiを繰り返し聴いて耳と能に定着してしまっているので、本作に収録でOKと僕は思います。
深追いするならウェイン・ショーターのリーダー作、1969年「スーパー・ノヴァ」に完成品として収録されているそうです(僕は老後の楽しみにとっておきます・・・)。
Capricorn を聴く・・・
これもショーター作曲。
これもまた、深追いするならウェイン・ショーターの1969年「スーパー・ノヴァ」に完成品として収録されているそうです(僕は老後の楽しみにとっておきます・・・)。
ああ、これもひょっとして・・・やっぱりよく聴いてみると、ハンコックのピアノが伴奏をしてませんね。アドリブ・ソロのときだけしかハンコックは弾いてません。
ウォーキング・ベースがまったく予想のつかないラインをたどるので、とても気持ちがいいです。
Sweet Pea を聴く・・・
これもまたまた、ショーター作曲。
小川隆夫さん「マイルス・デイヴィス大事典」によると、ビリー・ストレイホーン(「A列車で行こう」の作曲者)にショーターが捧げた曲と書いてありすよ!!
へぇ~~~~~トリビア~~~(古)
スウィート・ピーはストレイホーンのニックネームとも・・・。
こういうのがあるから小川さんの大事典は「くぅ~~~たまらんっ!(中山節)」ってなります。w
でもおじさんがおじさんに捧げた曲(失礼w)としては本当にスウィート過ぎるロマンティックなバラードではありませんか?
かといって、トニーのドラムスが活躍してないわけではなく・・・。むむ~ん、いいわぁ~♡
またまたこれも、深追いするならウェイン・ショーターの1969年「スーパー・ノヴァ」に完成品として収録されているそうです(以下同文w)。
Two Faced を聴く・・・
ショーター作曲。
当ブログ初の電子楽器を使った曲の登場です。
ハンコックとチック・コリアの2人のレジェンドがマイルスと共演しているという、なんともはや、盆と正月が一緒に来ております。w
2人ともエレピをプレイしています。
デイヴ・オランドがエレベ(エレクトリック・ベース)をプレイしています。
18分のロング・プレイ。
制作段階を物語りますが、史的には非常に興味深い・・・。
全然きづいてませんでしたが、1969年の超歴史的名作、「ビッチズ・ブリュー」の中の「スパニッシュ・キー」の中でのマイルスのソロとほぼ同じメロディが、この曲の1回目のマイルスのソロで聴かれるとのことです(中山康樹さん「マイルスを聴け!Version7」より)。
これはこの記事を書き終わったらチェックせねば・・・。
中山さんが興味深いとおしゃっているのは、もうすでにこの段階(1968年)に「ビッチズ・ブリュー」の断片が現れはじめていたということです。
これはおもしろいですね!
Dual Mr. Anthony Tillman Williams Process を聴く・・・
長い・・・。タイトル長い・・・。
マイルス作曲はお久しぶり。
Mr.Tillmanはトニー・ウィリアムスのお父さんだそうです。ライナー・ノーツによるとテナー・サックスを「パート・タイム」で演奏してるとか。プロではないのでしょうか?
この曲になるといわゆる、「フュージョン」になってきた~なんて、浅はかな僕は思ってしまいますが、どうなんでしょう?
やっぱりキーボードの音色がトニーのドラムスとホランドのエレクトリック・ベースの音色と調合されると、フュージョンを感じます。僕はですけどね・・・。
実際、マイルスにはそんなことはどうでもよくて、新しいマイルスを模索していたに過ぎないでしょう。所詮、帝王の手のひらで僕はマイルスを聴いて踊らされてるに過ぎません。
その踊らされているのが、僕の楽しみです。
Splash を聴く・・・
マイルスの作曲。
これ、当初のアナログLPには収録されておらず、CDでボーナス・トラックとして初出のようですね。
「マイルスを聴け!!Version7」には紹介されていない楽曲です。
変則的なリズムで始まるファンキーな楽曲で、5曲目の「Dual~」と同じ曲です。題名が異なるだけ。
試作段階をマニアにご紹介しているといったところでしょうか?
Circle in the Round(1955~1970年)というコンピレーションの中でも収録されています。
全般をとおして・・・Water Babies
もう一つのネフェルティティ・・・Another Nefertitiと勝手に決めた件
1~3曲目はやっぱりショーター作曲のもう一つのネフェルティティ、名付けてAnother Nefertitiとさせていただきます。w
やっぱり、試作的なことや、アプローチがネフェルティティに収録されていたとしても、なんら問題はない・・・あえて言うなら、聴き手があまりにネフェルティティの本収録6曲に完結してから、約9年後に世に出回った楽曲たちであることを考えれば、しかたのないこと。
そして当時のアナログ・レコードの収録時間と音質のバランスを考慮したら、ネフェルティティがあの6曲に絞られたのも、これ、しかたのないこと・・・。
ウェイン・ショーターは自身のリーダー作で1969年「スーパー・ノヴァ」にこれら3曲を本収録していますので、ショーター・ファンには必須のアルバムともいえるはずです。
Bitches Brew の断片を聴け!
4曲目のTwo Facedで名作、「ビッチズ・ブリュー」の中の「スパニッシュ・キー」と同じフレーズが聴けるというのも、マニアにはたまらず、史的価値もあるかと思われます。
もう世界が度肝を抜かれた「ビッチズ・ブリュー」はこの時期には形になっていた。しかし、その前に本格的エレクトリック楽器の導入、2キーボードなどの新たな試行をしてから確立された、MILES IN THE SKY 、FILLES DE KILIMANJARO、 IN A SILENT WAY、 1969 MILESを経てからのBitches Brewということを知るのは、たいへんおもしろいところです。
これから「ビッチズ・ブリュー」を聴きなおします!!もうこれは修行です!!w
エレクトリック・マイルスへのお誘い・・・電化のはじまりを「マイルスを聴け!」で時代チェックしてみた件・・・
さて、いよいよマイルスの電化時代に入ってきましたこのブログ・・・。
いや、マイルスはアコースティックだとか、エレクトリックだとか、ビバップだフュージョンだとカテゴライズドされるのを嫌い、むしろジャズと呼ばれることすら否定してきましたので、それに従うべきでしょう。
マイルスの音楽は、いつも「マイルス・ディヴィス」というカテゴリーというか、音楽という概念も超えて、「カルチャー」だったのだと勝手に思います。
でも聴き手の僕たちは、膨大な帝王の作品群を聴いていくうえで、やはりこのアルバムがどこに位置づけられるのか、どの時代のものか、カテゴリーを知りながら聴くことで、迷子にならずに聴きどころをきっと「感じて」いけるようになると思います。
ですので「いよいよエレクトリック・マイルスのスタート」とあえて言います。
そしてとてもとても重要なのが、おそらく次回のブログで書く予定のMiles in the Skyでお話しすると思うのですが、
マイルスは決して安易に世間の流行にのって、
電子楽器を採用したのではない
ということです。
マイルスは自身の頭の中でできているものを表現するためには、エレクトリックの採用は必然的だったとしています。
その辺のことを書きだすと、2万字くらいのブログ記事になってしまいそう・・・怖
時間がいくらあっても足りませんw
本業を辞めなくてはいけませんw
最後になりますが、本作がマイルスの膨大なアルバム群の中でどの時代に位置しているのかとチェックしてみることにします。
中山康樹さん著「マイルスを聴け!Version7」でいうと、Water Babiesのページを開くと上記写真のような位置にあります。
この本は縦書きで右から始まり、左へ時代順にアルバムを紹介しています。
全975ページ中、本作「ウォーター・ベイビーズ」は244ページにあります。
いくら後年、ブートレグがたくさんリリースされているとはいえ、まだマイルスの作品群の4分の1程度しか聴いていないことになるんですね。
山で例えるなら2.5合目。
ましてやVersion7の段階であり、Version8以降で考えたら、もっともっとアルバムがあるわけですね。
楽しいではないですか?
ワクワクしませんか?
ここからも当ブログ、たまに覗いてみてやってください。
ヘンテコな視点から、いろいろお話ししていきますので、エレクトリック期もどうぞ、ご高覧くださいませ。
また「ワシはマイルスのエレクトリック期なんぞ、ジャズと思っておらん!聴かんぞ!!」というかた、おられましたら僕と一緒に試しに今後、聴いてみませんか?
僕もほんの数年前までは「マイルスはアコースティック期のみしか買わない」という「マイルスに関するマイルール」がありましたが、簡単にそれはうち崩れました。w
なかなかいいもんですよ!
本日もお付き合いいただき、誠にありがとうございます。
<(_ _)>
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