【マイルス・デイヴィス】Sketches of Spain  アルバム レビュー 考察28 

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Sketches of Spain 概要

1959年~1960年(いよいよ60年代に!) Columbia

パーソネルはたくさんいるので省略。編曲、アレンジにギル・エヴァンス プロデュースにテオ・マセロ

タイトルどおり、スペイン音楽をフューチャー

軽々しく『フューチャー』なんて書くべきではないかもしれないのですが、とにかくジャケットも録音内容もスペイン音楽をマイルスとギルが行った大作です。

録音も年をまたぐほどの長期にわたり、何度もポシャリかけてはレコーディングされてようやく完成。

マイルスとギルの二人の打ち合わせ、構想だけでも2か月を要したと自叙伝にも書かれています。

テオ・マセロがプロデューサーに

コロムビア・レコードに在籍のNew York生まれのプロデューサー テオ・マセロがこのアルバムからプロデューサーとして参加しています。

テオはマイルスとギルの前回の共作Porgy and Bess(1958年)ではアシスタントとして参加。ここから長きにわたりマイルスの要人として深くかかわる人物です。後にその名前をとったTeoなる曲もマイルスが作曲するほどです。

Teo Macero - Wikipedia

テオPorgy and Bessあたりからマスターテープを切ったり貼ったりする当時としては珍しい手法で編集をする技術に長けていました。それがこのアルバムでも遺憾なく発揮されています。

なぜマイルスはスペイン音楽をレコーディングしたのか?

この時期になぜマイルスはスペイン音楽をレコーディングしたのでしょう?

前作Kindof Blueでも最後の1曲Flamenco Sketchesでもスペイン音階でマイルスは作曲をしています。

その回でも紹介しましたがスペイン音階とはこちらです。

でそれを下記のリンク先でバーチャル・鍵盤でその音階をなぞって遊んでみてください。w

バーチャルピアノ | Musicca
音楽の先生と生徒のためのバーチャルピアノです。音や音程、和音や音階を目に見えるようにして、PC のキーボードでピアノを演奏してみましょう。

マイルスの自叙伝によると、メキシコ出身のスペイン系インディアンであるジョー・モンドラゴンというベーシストのお家に遊びに行ったそうです。

Joe Mondragon - Wikipedia

そこでマイルスが聴いたレコードがアランフェス協奏曲というこのSketches of Spain1曲目、16分に及ぶ大作の元の曲でした。

えらくマイルスはこのメロディに感動し、その場でこの曲をレコーディングしようと決心したんだとのことです。そのアランフェス協奏曲については次の章で書きます。

キャノンボール・アダレイの脱退

Kind of Blueを大成功させたマイルスでしたが、その後アルト・サックスのキャノンボール・アダレイが脱退してしまいます。

セクステットかクインテットに戻らざるを得なくなったマイルス。

喪失感もあったのか、しばらくは演奏から遠ざかることもあり、妻フランシスとの時間を楽しんでいた時期でもあったと自叙伝でマイルスは振り返っています。そんなときに聴いて感動した曲がアランフェス協奏曲だったんです。

1曲目 アランフェス協奏曲とは・・・Sketches of Spain

アランフェス協奏曲の作曲者とその背景について・・・

スペインのピアニストであり作曲家のホアキン・ロドリーゴ作曲の1939年のギターのための協奏曲です。

ホアキン・ロドリーゴ - Wikipedia

その第二楽章だけをマイルスとギルはレコーディングしました。

スペインの古都『アランフェス』。

ロドリーゴはスペインの内戦で傷ついたこの古都への哀愁と平和への祈りを想い作曲したとされています。

「アランフェス協奏曲」より第2楽章adagio/ホアキン・ロドリーゴ – YouTube

そう言われるとマイルスのアランフェスも納得のいく16分間だなと僕は思います。

マイルスに影響を受けてレコーディングされたもう一つのアランフェス・・・Jim Hall

僕はジム・ホールのアランフェス協奏曲のほうを先に聴いていました。1975年の作品だそうです。

マイルスの影響を受けてジム・ホールはアランフェスをレコーディングしたと当時、このアルバムを買ったときに知りました。その時はまだマイルスは全くと言っていいほど聴かず、ジャズギタリストばかり追いかけていました。なんせ僕もギターを少々かじっていますもので・・・。

アランフェス協奏曲を聴いての個人的感想・・・やっぱり『大辞典』を買うべし

カスタネットが入るあたりが『おお・・・スペイン』となりましたが正直、浅はかな僕にはスペイン音楽という感じはしなくて、クラシック?みたいに思いました。

しかし小川隆夫さんの『マイルス・ディヴィス大事典』が今の僕には手元にあります!

読んでみますとアランフェス協奏曲について、細かく分析なされておられます。

僕とはレベルが桁違いでした!!

この16分間の大作の聴きどころを『〇分〇〇秒のマイルスの〇〇〇〇』のように解説してくださってます。

やっぱりマイルスを、ジャズを聴くならぜったいあったほうがいい!!

こんなに教えてくれる本はないです!!

大音量で部屋を真っ暗にして寝そべってアランフェスを聴いてみた・・・

これらの小川さんのアランフェスの解説をもとに聴きなおしてみると、あれ・・・?

あっという間の16分間。

理解が深まった気がします。

そしてその後はブログを書くためにももう一回聴きなおそうと思いました。

時間も遅かったのでヘッド・フォンでですが大音量にして聴きました。

しかも部屋を真っ暗にして、寝そべって・・・

これは僕のTwitterの少ないながらもいろいろ教えてくださるフォロワーさまのおひとりが『部屋を真っ暗にして大音量で聴く』ことをおススメされていたのでやってみました

今まで聴いたアランフェスはなんだか堅苦しかったですが、今回はもっと感性に任せて聴けた、気持ちよく聴けた・・・そんな気がします。

視覚をあえてふさぎ、聴覚と胸の感覚を研ぎ澄ませることができるような気がします。

家族には『もう寝るの?』って言われましたけどね・・・w

皆さまもお試しください!!

4曲目 Saeta について・・・ むむっ・・・? 正露丸の曲・・・?Sketches of Spain

4曲目のSaeta

Kind of Blueでふわっと気持ちよくなっていた前回と随分、志向が変わります。

マーチです!

マーチング・バンドのタッタカ・タッ・タッ♪です。w

おおおおおおお、これは・・・・・・聴けません・w

マイルス親分、天国の中山さん、ごめんなさい・・・。

これは僕の聴きたいものではない・・・(そこまで言うか?)。

そう思い、正直アランフェスは今までも何回か聴いてきました(ジム・ホールを先に聴いていたからもある)が、このマイルスは聴きにくいわ~

ごめんなさい。

でも中山さん『マイルスを聴け!』の中でも1曲目のアランフェス以外の2~5曲目からこそ『深い感動を覚える』とおしゃっています。orz

それが僕にはわからないのです・・・orz(再び)

ごめんなさい・・・orz(三タビ)

マーチを聴くような血わきたぎる今の僕には元気もないです。忙しい日常に癒しをマイルスに求めています。自分を奮い立たせてくれるマイルスの教えを乞うているようなクールさが欲しいのです。

マーチはハードルが高い・・・。

で、さらにいうと皆さまもお聴きになりましたか?

この曲・・・

大幸薬品 ラッパのマークの正露丸ではないですか!!

これで僕は初めて聴いたときにツボに入りました。

なんだ~正露丸のラッパはこの曲が元ネタなのか~。

そう勝手に思っていましたがSketches of Spainを買った当初、念のため調べました。すると・・・

正露丸 - Wikipedia

『陸海軍で信号ラッパを用いて伝達用に吹奏されていた須摩洋朔作曲』とあります!!

偶然の一致です!!

同じ曲ではございませんw。

ですので僕みたいにツボに入って聴けなくなる・・・なんてことにならないように、皆さまはお気をつけください。

本当は感動を覚える名曲です巨匠中山さんが述べておられます。

ちなみにSaetaはスペインのマーチを元にギル・エヴァンスがアレンジして作曲したものです。

小川さんの大事典によるととても宗教的な曲で女性が歌うメイン・メロディをマイルスのトランペットが演奏します。

正露丸とは程遠い内容のものとなっています。

Sketches of Spain 個人的感想・・・難しい

今回、じっくり聴きなおしてみて、このアルバムはやっぱり難しい・・・と思います。

このブログを始めた当初、マイルスやジャズを聴き始めのかたは『1951年Dig~1962年Seven Step to Heavenの中からならどのアルバムからでもOK(ライブ・アルバム除く)』と言ってきましたが、訂正いたします・・・。

『 1951年Dig~1962年Seven Step to Heavenの中からならどのアルバムからでもOK(ライブ・アルバムとギル・エヴァンスとの共作を除く)』

こう変更いたします。

申し訳ありません<(_ _)>

ギルとの共作、Miles Ahead、Porgy and Bess、Sketches of Spainの3作はやっぱり、正直、難しいわ!!w

これを聴くには時代背景やマイルスの周囲の環境、マイルスのそれまでの歩みなど、いろいろ知ってから聴いたほうがいいと思います。

一枚目にこんなに悩んで聴くとせっかくのマイルスへの入り口が、『聴覚と胸の感覚』で聴けずに小難しくなりそうだからです。

もっと気楽に、楽しんで聴き始めてほしい。そう思います。

超大作、アルバムレビューもかなり多くの人が評価が高い。だからと言って僕にも必ずしもそうではなくてもいいですもんね。

でもこのアルバムを手に入れた当初よりなんだか深まってきているのは確かです。

アランフェス協奏曲が傷ついた古都・アランフェスを想い、平和を祈り、作られた曲ということを知っただけでもこのアルバムを数回聴きなおし、胸に今までにない熱いものを感じることができました。

今夜はジム・ホールのアランフェスを聴いてから寝ることにしようかな・・・。

そして老後は古都・アランフェスへ行く・・・また一つ宿題ができてしまいました。

ああ、これもジャズか。

なんて楽しいんだろう!!

筆者<br>かなやま
筆者
かなやま

『マイルスを聴け!』シリーズと著者の中山康樹さんについて

僕なりの熱い記事を書きました。

こちらをご覧ください。

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