Miles Ahead 概要
1957年 Columbia
Miles Davis+19(パーソネルはたくさんいるので今回省略)
今回は『マイルス・アヘッド』
旧友の作曲、編曲家、指揮者のギル・エバンスとのコラボが始まります。
モード・ジャズ期に入り始める1作です。
二種類のアルバムジャケットの存在について Miles Ahead
このアルバムには二種類のアルバムジャケットが存在します。
もともと女性がアルバム・ジャケットに登用されていましたがマイルスの意向でマイルス自身の写真のものに変更されたとされます。
なぜ女性の写真デザインだったかというと、ジャズというカテゴリーだけで販売しても限界を感じていたジョージ・アヴァキャンやコロムビアの考えがあって、全般的に誤解を恐れずに言えば『ムード音楽』的に販売する戦略があったと言われます。
女性のジャケットのほうがマイルスやジャズを聴かない、西洋音楽ファン、クラシック・ファンにも受け入れられるのではないかという商業戦略でした。
聴いてみると実際、心地の良い、曲間の切れ目のない一つのストーリー性のある優雅なアルバムとなっています。
(最初、ボーナス・トラックが19曲もあるのか?と思ったのは自分だけではないはず・・・w)
そのような戦略をとった証拠として、僕の持っているアメリカ盤のこのアルバム、英語のライナーノーツには1993年にジョージ・アヴァキャンが書いたマイルスの経歴を詳しく説明している文が掲載されています。
もともとのマイルスファンにむけたライナーノーツではないのですね。
そんなわけでマイルスのトランペットを吹く、シャツ+ジャケット姿の写真のものに変更され、2種類が存在することになったそうです。
オーバー・ダビングでの録音 Miles Ahead
今作で注目されるのは『オーバー・ダビング』の技術が入ってきたことにもあります。
説明しにくいので以下、小川隆夫さんの『マイルス・デイヴィス大事典』よりの引用・・・(いつもありがとうございます)
注目すべきは、早くもオーヴァーダビングの手法が取られたことだ。2トラックのステレオ録音は始まったばかりだったが、このレコーディングでは3トラック方式が採用されている。3トラックに録音されたものを新たな3トラック・テープの2トラックに移し、サード・トラックをマイルスのソロ用に空けるというテクニックが駆使された
小川隆夫さん著 マイルス・ディヴィス大事典より
これはなかなかの高い技術だったのではないでしょうか?
こうして『正座して』w聴いていると・・・オーケストラに負けない非常に鮮明なマイルスのソロが聴けますし、バランスがよい。本当に心地よい。1957年の日本の音楽シーンの録音技術とは比較にならないでしょうね・・・。
そしてこれは現在、CDやストリーミングで聴けるわけで、アナログ・レコードでも不可能だった本当に全編とおしての連続した一つの作品として完成されたのだと勝手に思います。
個人的見解・・・Miles Ahead
もともとはあまりオーケストレーションのあの管楽器が一斉に『プーー---』っとなる音圧が好みではなかったのですが、このアルバムは気づくと全編、聴き終わってしまいます。
時間を忘れてもしかすると、あまり馴染みのないクラシックを聴いているような気分もあり、年末年始にゆったり聴きたかったかな・・・あ、まだ今日は1・10三連休の最終日にこれを書いているからまだまだ正月気分ですけど・・・w
3曲目“The Duke”はデユーク・エリントンへの崇拝ソング(デイヴ・ブルーベック作曲)はいろいろなライブ・イベントやアーティストのアルバムで聴いてきた大好きな曲です。
ジャズ・ビッグバンドの醍醐味ともいえる豪華な雰囲気で、さらにそれがマイルスたちの演奏となると、まさに『正座』なくして聴けない1曲となっています。w
ギル、ジョージ・プロデューサー、コロムビアの戦略どおり、マイルスをこれから聴くクラシック好きなかたがたにはとても入りやすい名作なのかもしれませんね。
かなやま
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